さてこの連載も最終回。これまで、飲食・食品業界における「こだわり」という言葉を筆頭に(関連記事)、いろいろな業種における「空気コピー=あってもなくても同じような効果がない言葉」について考察してきた。最後に言い残したことを書く。それは日本という国のいたるところに溢れている「空気コピー」の数々だ。
いや空気ならまだいい。実際、これらの言葉は、世の中に悪影響をまき散らす「公害コピー」になっている場合が多い。過剰で無駄な言葉のせいで、本当に伝えなければいけない重要な情報が伝わらなくなっているからだ。しかもたちが悪いことに、このような「公害コピー」をまきちらしている発信側は、罪が大きいことを自覚していない。「ちゃんと伝えたのにその通りにしない利用者が悪いんだ」くらいにしか思っていないのだ、たぶん。
例えば、電車に乗るために駅に着く。啓発ポスターがいたる所に貼ってある。「歩きスマホは危ない」「キャリーバックに気をつけて」「エスカレーターは歩かない」などなど。しかし、「歩きスマホは危ない」というポスターの前にいる人の多くがスマホ画面を見ている。当然歩きながら見ている人も多数いる。
電車に乗れば、「お年寄りや体の不自由な人に席をお譲りください」「ひとりでも多くの人が座れるように座席に荷物を置かないで」「優先席の前では携帯電話の電源をお切りください」など、車掌のアナウンスがひっきりなしに流れる。しかし優先席でスマホや携帯の電源をわざわざ切るような人はほとんどいない。
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