取材を断ったら「嘘つき」と怒られないために、広報担当者がすべきことスピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2016年03月01日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「企画のギャップ」を理由にする方法

 ここで「俺様はジャーナリストなんだから特別扱いしろよ」という人はほとんどいない。「ジャーナリスト」は「中立公平」「平等」が好きなので、「特別扱い」を求めるジャーナリストは、それだけで取材を断っていい類の危険人物だ。

 これでカンのいい取材者は、「ああ、これは遠回しに断っているんだな」と気づき、他のアプローチを探る。ただ、粘り強くアプローチをしてくる人もいるだろう。そういう場合は「企画のギャップ」を理由にする方法もある。

 企業広報の間では常識だと思うが、取材の申し込みがあった際には事前に取材意図や質問を確認する。それを踏まえて、このように回答をする。

 「いただいた取材意図や、質問を社長にあげましたが、今時点では、××様の満足のいくようなお話ができないので、お断りして欲しいと言われてしまいました。力になれなくて申し訳ありません」

 要するに、あなたが求めている話はでないので、お互い時間の無駄なのでやめておきましょう、ということをまわりくどく伝えているのだ。もちろん、そこで相手が「じゃあなんだったら喋れるんだ? 社長の喋りたいテーマでいいですよ」と食い下がってくることもある。それに対しても即答をせず、一旦持ち帰ってから後日、「中期経営計画をまとめているところで、社長自身もお話したいテーマも固まっていない段階ですので、今回は見送らせてほしいという返答がきました」なんて対応を粘り強く続けていくのだ。

 ここまでやられると、どんなに鈍感な人間でも「取材拒否」と分かる。やられた本人が言っているのだから間違いない。

 そう、実はこれは数年前、筆者自身がある企業広報の女性から受けた対応なのだ。そこの企業トップに面と向かって問い詰めたいことがあったので、かなりしつこく取材を申し込んだのだが、彼女もそれを上回るしつこさでかわしてきた。結局、この「攻防」は2カ月にも及んだ。

 こちらの希望が通らないという苛立ちは感じたが、その一方で、見ず知らずのフリーライターにここまで時間と労力で割いて対応する広報としてのスタンスには素直に「たいしたもんだ」と感じたものである。

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