ベッキーの謝罪会見は、なぜ「質問禁止」だったのかスピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2016年01月12日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。

 そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。


 「ベッキー」と「ゲス川谷」というキーワードがいたるところにあふれかえった1週間が終わったが、両者への厳しい風当たりはやむ気配がない。

 ご両人がしたことについては、多くのメディアが報じられているので、今さら何かをとやかく言うことはないのだが、個人的には非常に興味深いことがあった。それは、ベッキーが行った謝罪会見の「質問禁止」だ。

 繰り返し放映されたのでご覧になった方も多いと思うが、会見ではベッキーから「私の軽率な行動で誤解を与えてしまった」という釈明が一方的になされ、メディアからの質問は一切受け付けないというスタイルだった。

 会見の場にいたメディアが、「後方では大手広告代理店の関係者が見守っており、スポンサー向けの釈明会見に見えた」(スポーツニッポン)とにおわしているように、あれはファンやゲス川谷氏の妻へ向けたものではなく、自身をイメージキャラクターに起用した大企業10社へ向けた「釈明」であることは誰の目にも明らかである。

 ただ、しっくりこないのは、なぜそこで「質問禁止」という道を選んだのか、だ。

 もちろん、LINEのやりとりや、ホテルで撮影したという写真などさまざまな「ブツ」がある以上、鋭い追及を受けたらもちこたえられないというのはよく分かる。「お友だち」という防衛ラインを突破された瞬間、スポンサー企業10社は潮が引くように去り、多額の損害賠償請求をされる可能性が出てくることに加え、ベッキー個人としてもゲス川谷氏の妻から訴えられてしまうというリスクがあるのだ。

 ただ、その一方で「広告のイメージキャラクター」である以上、社会から反感を買うリスクを回避しなくてはいけなかったはずである。「質問禁止」では、「誠意をもって説明をする気がない」という姿を印象づけ、「不倫」に加えて「うそつき」というマイナスイメージがつく恐れもある。そのようなタレントを広告に起用する企業はない。どちらにせよ「アウト」だ。

 ならば、多少なリスクはあろうとも、隣に弁護士を同席させ、ディズニーシーやらLINEというクリティカルな質問は代理回答をさせるなりにして、形式だけでも本人が質疑応答をしているという戦略もあったはずだ。実際に、スマップのクサナギくんの「裸でなにが悪い」騒動や、稲垣メンバーの道交法違反で逮捕された際の会見では、高名な弁護士が脇でサポートをしている。

なぜベッキーは謝罪会見で、メディアからの「質問」を受け付けなかったのか
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