日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
先週、2つのCMがネット上で大きな話題となった。
1つは、「ガリガリ君」の値上げ謝罪CM。25年ぶりに価格が10円上がるということで、製造元の赤城乳業の井上秀樹会長をはじめ社員が工場前にずらりと並んで頭をさげたこのCMは、4月1日、2日とテレビで放映されたほかネットでも公開され、「25年もよくがんばった」などと称賛の声が寄せられたのだ。その反響は、中国のネットユーザーにまで及び、「10円の値上げでなんでこんなに頭を下げるの?」「これが日本の謝罪文化か」なんて驚きをもって語られているという。
そんな高評価CMとは対照的に、批判の嵐にさらされたのが「日清カップヌードル」のCMだ。
ビートたけしさんが学長、小林幸子さん、ムツゴロウさん、新垣隆さん、そして矢口真里さんというパンチのきいた面々が教授を務める「OBAKA's UNIVERSITY」というシリーズを先月30日から放映していたのだが、クレームが多く寄せられ今月7日に中止を発表した。
「危機管理の権威」に扮した矢口さんが生徒たちの前で「二兎を追うもの、一途をも得ず」と熱弁をふるっていたことや、新垣さんが二人羽織でピアノの指導をしていたことなどが、一部視聴者の逆鱗に触れ、「不倫や虚偽を擁護しているように見える」という意見が殺到したんだとか。
かたや大絶賛、かたや批判の嵐。そう聞くと、2つのCMは天と地ほどの違いがあるように思うかもしれないが、実は基本的なスタンスはよく似ている。
それはともに「攻めたCM」だったという点だ。
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