カリカリまだある? 母のカレーが生んだ北海道のヒットメーカーに迫る(3/3 ページ)

» 2016年05月12日 08時00分 公開
[鈴木亮平ITmedia]
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“よそ者”だから今までにないものを作れる

 ヒット商品はどのようにして生み出されたのか。勝山さんは「お菓子業界を知らないからこそ新しいものが生み出せる」と語る。同社は、生産工場を持つメーカーと組むことで、あくまでプロデュースに特化する。工場の生産ラインを知らない“よそ者”がアイデアを出すからからこそ、今までにない商品が生まれるのだという。

 「業界の知識が少しでもあると『こういうものは売れない』『作れない』という先入観が邪魔してしまいます。知らないからこその強みがあるわけです」(勝山さん)

photo 勝山良美さん

 実際、同社が開発するお菓子は独特な製法だ。例えば、カレーせんべいの場合、カレー粉を振りかけるという製法が一般的といわれているが、同社は勝山さんの作った“カレーソースを浸す”ことで味をつけている。「カレー風味ではなく、カレーそのものを味わえる商品にしたかった」(勝山さん)

 “お土産作りは料理”という考え方で、「oh! 焼きとうきび」の開発ではコーンを砕いたパウダーを振りかけたおかきに加え、フリーズドライにした実際のコーンも入れた。

 当時、せんべいをカレーソースに浸したり、おかきと一緒に実際のコーンをいれる製法を提案された食品メーカーは「おいしくするためにそこまでするのか」と驚いたそうだ。生産が非効率になる上に、その上新しく設備投資をする必要もあったからだ。

 しかし、勝山さんは「食べたときに、本物の焼きとうきびやカレーを食べたような感動を与えたい」として、料理人の考え方・技術をそのままお土産に適応したのだ。

 「メーカー側はどうしても効率的かどうかを無意識に考えてしまいますが、我々は単純に『こんなのがあったら良いな』で考える。業界の中にいる人間と、外にいる人間の考え方が良いバランスで合わさることで、今までにない商品が生まれるのだと思います」(勝山さん)

 そして、今までないものかどうか、オリジナリティはどこにあるのか、勝山さんはそれを何よりも強く意識する。

 「当たり前のこと、今までと同じことをやっても、当たり前(普通)の商品しか生まれません。我々は実績のある老舗企業ではありませんから、同じ戦い方をしても勝てません。『新しさ』がなければ、消費者は安心・安定の定番商品を選びますので」(勝山さん)

 今年で65歳になるが、年齢を感じさせないそのパワフルな挑戦心も成功の要因だろう。「気持ちが若ければ何年経っても老いることはありません。自分がどこまで通用するか試していきたいです」――そう語る勝山さんは、ソフトクリームの開発にも着手するなど、次々と新しいことに挑戦している。10年後、20年後も大ヒット商品を出し続けていそうだ。

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