決算発表と2人の巨人 鈴木修と豊田章男池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)

» 2016年05月16日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 自動車メーカー各社の決算発表が出そろった。残念ながらスケジュールの都合で全ての発表会に出席することはできなかったが、各社のサイトでも決算結果が見られるので、2015年度が自動車メーカー各社にとってどういう年であったのか、そして2016年度がどうなるのかをまとめてみたい。

 2016年3月末で締まった2015年度の決算内容は、多少の差はあるものの、各社概ね順調だった。それは例えばリーマンショックのときのように、自動車産業全体が危機に瀕するような異常事態は起こらなかったということだが、とは言え、世界市場の微妙な動きによって各社個別にはやはり明暗があった。

2015年度振り返り

 グローバルマーケット全体の流れを見ると、昨年好調だったのは北米マーケットとインドマーケットだ。両エリアとも各社が販売台数を伸ばしている。ということは、北米で強いトヨタ、日産、ホンダ、スバルには有利だったことになる。インドでは当然スズキが販売台数を伸ばしている。

スズキがインドで発売したバレーノ。スズキはインドででの販売台数を昨対比で11.5%伸ばし、シェアを46.8%にまで押し上げた スズキがインドで発売したバレーノ。スズキはインドででの販売台数を昨対比で11.5%伸ばし、シェアを46.8%にまで押し上げた

 アジアのマイナス要因は、ASEAN最大の人口を誇るインドネシアが、競争の激化に伴い、パイの奪い合いに入ってマイナスになっている。

 そのほかのエリアを見ると、欧州はロシアが大きく足を引っ張った。ルーブルと原油価格が下がり、輸入が停滞している。中東は原油安に伴う景気の減速、中南米は現地通貨のインフレによる労務費の高騰というのがおおよその流れだ。

 また、為替が円安に大きく振れたことによって、各社とも利益が膨らんでいる。トヨタの豊田章男社長が「ここ数年の利益は追い風参考記録」と発言するくらい為替メリットが出ているのだ。

 つまり、2015年度のグローバルマーケットを整理すれば、有利な為替による追い風の中、北米とインドでどれだけ販売を伸ばしたかが大きな分岐になると考えれば概ね間違った理解ではないだろう。

 国内では、軽自動車の減速が目を惹く。これは言うまでもなく、軽自動車税の引き上げが原因で、政治と産業が不可分であることをよく指し示している。当然ながら、軽自動車への依存度が高いトヨタ(ダイハツ)、ホンダ、日産、スズキ、三菱は軽の不振によるマイナスの影響を受けている。

 登録車(軽自動車以外)に関して、各社とも新型車の投入では大きな失敗はなかった模様で、大本営発表ながら売り上げアップの主要因を新型車投入としているケースが多い。

 余談になるが、ホンダとスズキに関しては、二輪事業が厳しさを増している。両社とも二輪部門の包括的な攻略プランを発表することができず、スズキの鈴木修会長をして「落ち込みにこらえていくしかない」と言わしめる状況である。

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