テクノロジーが変える、クルマのカタチ 自動車業界最前線

相次ぐ自動車メーカーとIT企業の提携 両者の狙いとは?(2/4 ページ)

» 2016年06月28日 08時00分 公開
[森口将之ITmedia]

プラットフォーム型ビジネスを、自動車業界で展開

 自動運転と歩調を合わせるように注目されるトレンドとしてもう一つ、ライドシェアがある。自動車を共同利用するカーシェアリングも、21世紀に入って先進各国で普及が進んでいるが、それとは内容が違っている。

 09年にUber Technologies(以下、Uber)が立ち上げたこのサービスは、米国では一般的に行われていた自動車の相乗りのマッチングをスムーズにする、スマートフォンのアプリだ。利用者の側から言うとタクシーに近いが、提供側から見ると配車アプリとなる。

 米国では他にもLyft(リフト)など数社が配車アプリを提供しており、欧州でもタクシードライバーの反発を受けながらも普及しつつある。今年5月にはついに日本でも、条件付きながら京都府京丹後市で展開を始めた。中国では昨年、Uberへの対抗として滴滴出行(Didi Chuxing)という新会社が誕生。同社はLyftと提携を結び、今年5月にはAppleの出資を受けたことで話題になった。

 ここまで「Googleが自動運転を開発中」と発表してからの主な流れを振り返ってみたけれど、自動車メーカーがこうしたIT企業の参入を脅威に感じているのは、単に自動車業界に参入してきたからではない。ビジネスモデルが違っていることも大きい。

 自動車メーカーのビジネスは、完成車を作るメーカーが頂点に立ち、その下にサプライヤーと呼ばれる部品メーカーなどが位置するピラミッド型だ。垂直統合型とも呼ばれるこの構造は、メーカーがクルマ作りの意思決定権を持ち、サプライヤーがそれに追従する構図になっている。

 IT企業はそうではない。プラットフォーム型、水平連合型だ。例えばGoogleは、スマートフォンにおけるAndroid OSなど、仕組みを構築し、それを世界標準とすることを得意としている。Uberも、自分たちで構築したのは配車アプリというプラットフォームだけで、車両はおろかドライバーも外部から調達している。

 AppleはPC作りから出発した企業だが、同時に自社開発のOSを核としており、音楽配信サービスなど、プラットフォーム型ビジネスに乗り出している。iPhoneも端末自体はモノづくりだが、アプリを自由に入れて使えるという点ではプラットフォームでもある。

 自動車の世界でプラットフォームと言えば、エンジンやサスペンションを取り付ける車台のことである。車台はエンジンと並ぶ自動車技術の根幹部分なので、各メーカーとも独自開発にこだわる。トヨタ・アクアとホンダ・フィットが同じプラットフォームというのはあり得ない。

 しかし、AppleやGoogleの車載情報システムは、搭載する相手が対応すれば、メーカーは問わない。スマートフォンなどで展開しているプラットフォーム型戦略を、自動車業界で展開しようとしているのだ。

 いや、既に展開は始まっている。例えば車載情報システムは、従来はトヨタの「T-Connect」のように自動車メーカーが主体となって開発を行い、車載端末とセットで提供するのが一般的だった。しかしAppleが開発した「CarPlay」は、システムは接続するiPhoneの側にあり、車載端末は表示と操作を担当するだけだ。CarPlayは国産車を含めて採用例が増えており、自動車メーカーがほぼ独占していた情報通信システムの分野に、着実に入り込みつつあるのだ。

photo 「CarPlay」

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