6月22日、ITmedia ビジネスオンライン編集部が主催するセミナーイベント「好業績企業に学ぶ 企業コミュニケーション戦略」が大阪市内で開催された。
空間デザインのリーディングカンパニーとして数々の企業オフィス改革を支援する乃村工藝社や、約1年前に本社移転を敢行して社員の働き方改革を推進している楽天などが成功事例を紹介した。
オープニングの基調講演では、乃村工藝社でCC第二事業本部 事業戦略部 部長を務める中村久氏が登壇し、空間を活用した企業のコミュニケーション改革事例を示した。
乃村工藝社が手掛けるワークプレイス変革において共通するメッセージが「User Experience Design」だ。ここで言うユーザーとは、社員とその会社の顧客(オフィス訪問客など)であり、ワークプレイスの改革を通じて彼らに対し企業ブランディングを高めていこうとするものである。
その実例として、中村氏はある会社の物流センターでの改革を紹介した。この物流センターでは従業員の離職率の高さが大きな問題となっていた。仕事に対するモチベーションが低く、社内のコミュニケーションも少なかった。
そこでまず乃村工藝社が提案したのは、従業員のタイムカードの設置場所を変えて、従来のロッカールームから、部長の座席の前にすることである。すると、すぐさま変化が表れた。今までは朝出社しても挨拶がなかったが、部長と顔を合わせざるを得ない状況を作ったので、挨拶が生まれ、そこから双方でコミュニケーションが始まった。「例えば、出社時間がいつもより遅い社員がいれば、部長から『どこか具合でも悪いのか?』などと自然と話し掛けるようになった」と中村氏は説明する。
次に行ったのが、エントランスから伸びる通路の幅を広げたことである。一般的に物流センターや工場などはどうしても暗いイメージがあって、それがそこで働く人のモチベーションに直結していた。それを象徴するものの1つが、暗くて狭い通路である。そこで同物流センターでは、幅を広げるとともに、照明にも手を入れて全体的に明るくするなどした。
さらには、物流作業の現場にデジタルサイネージを導入して、同社のブランドステートメントを表示したり、作業工程の進ちょくを数値でリアルタイムに見せたりすることで、チームで仕事をしているという一体感を演出した。
こうした取り組みの結果、生産性は以前と比べて30%向上したほか、作業のエラー率は0.1%下がったという。
もう1つの成功事例として中村氏が取り上げたのが、外資医療機器メーカーでの変革だ。同社では、「One Company」をテーマに、(1)強い個人がつながる(2)グループを知る(3)ブランドを感じる、を目的に掲げた。
この会社は、グローバルでのブランド力は非常に強いものの、日本ではビジネス上の苦戦を強いられていた。その原因の1つに、社員の帰属意識が希薄で、他の部門やグループ企業が何をしているか知らないことが多かった。そこで総務といったファシリティマネジメント部門ではなく、広報部門が主導となり企業ブランドの社内認知向上に努めた。具体的には、オフィスエントランスに全世界のグループ各社の最新情報や取り組みなどが常に閲覧できるようなサイネージを設置し、社員がすぐに情報収集できる環境を提供し、結果的に帰属意識が高まるようにした。
また、企業ブランドにストーリー性を持たせるために、創業者の名前を会議室に付けたり、会社の歴史を感じさせるアイテムをオフィスに取り入れたりした。
「オフィスのインタフェースを少し変えるだけでも、社内コミュニケーションは大きく改善する。ハード、ソフトの両面から働き方をデザインすることが肝要だ」(中村氏)
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