「仕事柄、当社には不摂生な社員が大勢いる。夜遅くに店舗での仕事を終えてから酒を飲みに行ったり、ラーメンを食べたりと。腹がパンパンに出ている人も決して珍しくない……」
こう打ち明けるのは、牛丼チェーン「吉野家」や讃岐うどんチェーン「はなまる」などを展開する吉野家ホールディングス グループ管理本部の大前雅英執行役員だ。同社は経営ビジョンに「人」「健康」「ICT」という3つのキーワードを掲げているが、健康についてはこれまで理想と現実にギャップがあったという。
同社が唱える健康とは、1つには野菜だけの「ベジ丼」に代表されるヘルシー志向の商品によって顧客の健康を実現すること、もう1つは休職者や離職者を減らすべく従業員の健康を実現することである。ところが、後者に関しては、とても健康体だとは言えない社員が散見されていたわけである。会社としても取り立てて対策をとっていなかった。
そうした課題認識の下、同社は2015年5月に社員の健康を推進する「ウェルネス経営」と、それを統括するCWO(最高健康責任者)制度の導入を発表(関連記事)し、すぐさま改善活動に着手した。
まずは、各事業会社で部長以上の役職者のうち、健康診断で「肥満度」が所見ありという36人を対象にヘルスケア施策を実施。ダイエットサービスなどを手掛けるFiNCの食事指導アプリを8月21日〜10月19日までの2カ月間、対象者に利用してもらった。
すぐさま成果は表れ、多くの社員が10キログラム以上の減量に成功、中には20キロも痩せた強者もいたという。現在、ホールディングスのCWOを務める大前氏も96キロから78キロと減量した。「自発的にトレーニングしたり、食事内容に気を遣ったりと、ちょっとしたきっかけで意図的に行動できることが分かった」と大前氏は強調する。
ダイエットを促進させるための工夫もあった。肥満度の基準にかかわらず各社の社長にも実施してもらうとともに、例えば、社長とその事業会社の社員、人事担当役員と管理部門の社員など、より身近なメンバーが刺激を与えるようなチーム分けをした。「何よりもトップ自らが率先して取り組めば、部下はやらざるを得ない。そういう仕組みにした」と大前氏は説明する。
今ではランニングする人が増えたり、筋トレマシンを競うように買ったりと、いつの間にか多くが“健康オタク”に生まれ変わったそうである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング