人口3000万人の小さな国に、吉野家が「再上陸」したワケ東南アジア発、気になるニッポン企業(1/4 ページ)

» 2015年07月22日 07時00分 公開
[野本響子ITmedia]

東南アジア発、気になるニッポン企業:

 いま、東南アジアが元気だ。かつては人件費の安さを背景に進出する製造業が中心だったが、現在では旺盛な個人消費にも注目が集まる。急成長する東南アジアを目指し、進出する日本企業、現地で起業する日本人の数も増え続けているのだ。本連載では、マレーシア在住の著者が、マレーシアを中心にして、東南アジアでローカル向けのユニークな事業を展開している日本企業、日系企業に、その経営戦略と展開計画を聞く。果たして、彼らの戦略は将来の日本にどのような影響を与えるのか。


 牛丼チェーンを展開している吉野家ホールディングスがマレーシアに再上陸した。2015年5月11日、クアラルンプールに「吉野家」と「はなまるうどん」がコラボした1号店をオープンし、年内に3店舗、5年以内にはなまるうどんを含めて50店舗体制を目指す。

 吉野家ホールディングスは2009年にマレーシアから一旦撤退している。なぜ、このタイミングでの再スタートなのか。

 「前回進出したときには、牛丼がマレーシアの人に受け入れられず、来客数も厳しかったという経緯がありました。しかし、近年は中間所得層が増え、外食文化が成熟してきました。また食材の調達環境が変化し、使用できる調味料のバリエーションが増えたことや、マレーシアで長年外食産業を展開する現地法人から合弁の話があったことなどから、今回の進出を決めました」と語るのは、同社がマレーシアに出資した合弁会社、ヨシノヤハナマルマレーシアSDN BHDの前田良博執行役員。

 1号店は、クアラルンプールで人気のショッピングモール「ミッドバレー・メガモール」の目立つ場所に構えた。吉野家とはなまるうどんの両店舗を合わせ、約90坪という大型の敷地に120席を備える旗艦店だ(通常、日本の駅周辺型店舗では30〜40坪)。客足は現在平日で1000人、週末で1日1600人。売り上げは当初見込みの125%と好調だ。

 それにしても、なぜ一度失敗した約3000万人の小国で、小型店舗ではなく、いきなり300平米の旗艦店で勝負するのか。しかも吉野家とはなまるうどんをマレーシアで展開するヨシノヤハナマルマレーシアSDN BHDとは別に、同時期に「アジア・ヨシノヤ・インターナショナル」をクアラルンプールに設置している。

 アジア・ヨシノヤ・インターナショナルは、ASEAN各国の吉野家の運営を指導したり、メニューを提案したりする吉野家ホールディングスの子会社。いわば、吉野家のASEANでの本社機能だ。

クアラルンプールの中心地、ミッドバレーメガモールにオープンした吉野家の店舗。はなまるうどんとカフェも備える大型店舗だ
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