クロネコヤマトがマレーシアで快進撃の理由東南アジア発、気になるニッポン企業(1/4 ページ)

» 2015年07月07日 08時00分 公開
[野本響子ITmedia]

東南アジア発、気になるニッポン企業:

 いま、東南アジアが元気だ。かつては人件費の安さを背景に進出する製造業が中心だったが、現在では旺盛な個人消費にも注目が集まる。急成長する東南アジアを目指し、進出する日本企業、現地で起業する日本人の数も増え続けているのだ。本連載では、マレーシア在住の著者が、マレーシアを中心にして、東南アジアでローカル向けのユニークな事業を展開している日本企業、日系企業に、その経営戦略と展開計画を聞く。果たして、彼らの戦略は将来の日本にどのような影響を与えるのか。


 クロネコヤマトでおなじみのヤマトグループがアジア地域に宅急便を広げている。

 2000年の台湾、2010年1月には上海とシンガポールで事業を開始。2011年にはマレーシア、香港に進出した。マレーシアでは1988年から物流や引越事業のための事業所があったが、宅急便を本格稼働させたのは2011年から。現在、宅急便事業はマレーシア人口の約6割をカバーする。

 マレーシアの営業所は11カ所に増え、年間の取扱数は150万個。社員はセールスドライバーを含めて400人、うち250人が宅急便に関わっている。

宅急便を届けるのはマレーシア人だ。制服もシステムもほぼ日本と同じスタイルを取る

 ヤマトグループのマレーシアでの“武器”は、ネットショッピングのときに使える「代金引換サービス」だ。現在、宅急便を利用している約4割がこのサービスを使っている。

 マレーシアにはすでに大小合わせて約100社の宅配時事業会社がある。しかしこれまで代金引換サービスを取り入れたところはなかった。理由の1つが、マレーシアでのドライバーの地位の低さにある。じゃあ日本人のドライバーを雇えば……と思う読者もいるかもしれないが、国の法律によって、マレーシア人しか雇うことができない。現地のドライバーは嫌なことがあるとすぐに辞める。また、お金のトラブルも想定されたので、配達時に集金という行為に、他社は二の足を踏んでいた。

 では、なぜ「代金引換サービス」を導入することができたのか。そのカギは、セールスドライバーへの「教育」にあった。「当初はすぐに社員が辞めたり、配達時のトラブルもありました。しかし事業開始から3年が経ち、いまではマレーシア人のセールスドライバーは日本のヤマト運輸と遜色ない動きをしてくれるようになりました」と話すのは、ヤマトグループの現地法人、ヤマト・トランスポート・マレーシア・SDN BHD(以下:マレーシアヤマト)の山内秀司社長だ。

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