藤井薫(ふじい・かおる)
大学を卒業後、広告代理店や出版社を経てライターに。
『POPEYE』『an・an』(マガジンハウス)や『GLAMOROUS(グラマラス)』(講談社)などで、ファッション、ビューティ、ビジネスなど幅広い記事をカバー。日本と海外を頻繁に行き来して、海外トレンドを中心に情報発信している。
そんな思いをベースに、世界の企業動向や経営哲学をはじめ、それをとりまくカルチャーやトレンドなどを中心にして、思わず誰かに言いたくなるようなネタを提供していくコラムです。
「神の食べ物(テオブロマ・カカオ)」という意味の学名をもち、かつて富と権力の象徴でもあったカカオ。カカオは、言わずと知れたチョコレートの原料である。
現在、カカオの年間生産量は、年間消費量よりも下回った状態になっている。2013年には、全世界で生産量よりも7万トンを超えるカカオが消費された。そしてこの生産量と消費量のギャップが今後、さらに拡大するだろうと予測されている。
チョコレート製造メーカーの世界大手である米国のマース社と、スイスに拠点があるバリーカレボー社によると、2020年にはカカオの生産量が消費量より100万トンも足りなくなるだろうと警告している。しかも、この危機を回避するのはかなり難しいと見られている。いまでは手軽に食べられるチョコレートだが、もしかしたら近い未来、一般人には手の届かない存在になるかもしれない。
カカオの生産量が足りなくなっている、と言われてもなんとも実感は湧(わ)かないが、いったいカカオに何が起きているのか。最大の問題は、カカオの生産が非常に難しいことにある。仮にカカオの苗を植えても、実をつけるようになるまでに2〜3年はかかる。さらに品質のよいカカオの実が収穫できるようになるまでに6〜7年は必要と言われている。カカオは幹に直接花が咲き実になる植物だが、プランテーションのような人工的な環境では、花から実になるのは全体の1〜3%程度しかなく、非常にわずかな量しか収穫できないのだ。
しかも、カカオは限られたエリアでしか育たない。赤道から南北緯20度以内の範囲で、年間平均気温が27度で16度を下回ることがなく、年間降水量が1500から2500ミリメートルほどある、高温多湿な環境でないとダメなのだ。さらに肥沃で水はけのよい土壌が好ましく、強風にあおられることのない海抜700メートル以下の場所が理想的だ。
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