テクノロジーが変える、クルマのカタチ 自動車業界最前線

ライドシェアは過疎地で普及させるべきだ(4/4 ページ)

» 2016年07月27日 06時00分 公開
[森口将之ITmedia]
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自動運転やライドシェアが過疎地域を救う

 地方は人が少なく、まばらに住んでいる。タクシーやバスを走らせても、運行コストや人件費に見合った運賃収入が得られない。だから台数や本数が減っていき、ついにはその地域から撤退していく。運賃収入を原資とした従来型の経営では無理なゾーンなのだ。

 おまけにタクシーもバスも運転手不足が悩みとなっている。1人で運転や接客など複数の業務をこなし、労働時間は不規則なのに、収入はそれほど多くはない。故に新たにこの仕事を目指す人は少ない。その結果、運転手の高齢化が進んでいる。前述した自交総連の2012年のデータによれば、タクシー運転手の平均年齢は58.7歳だという。

 この問題を解決する手段の一つとして、過疎地を中心に導入されているのがデマンド交通、つまり利用者からの依頼に応じて走らせる公共交通だ。車両はバスとタクシーの中間のサイズ、具体的にはトヨタのハイエースを多く用いており、地方自治体が主体となって走らせることが多い。しかし、財政面ではギリギリという地域が多い。

 そこで、過疎地限定でライドシェアを認可し、地元の住民や労働者が自分たちの車両を用いて地域全体で移動を支え合う仕組みができれば、車両コストや人件費は切り詰められるはずだ。

 また、近い将来自動運転が実用化されれば、人件費も大幅に切り詰められるので経営が楽になり、過疎地の運行がしやすくなるかもしれない。そして、自動運転によってドライバーがいなくなれば、ライドシェアもタクシーも同一のものになっていく。

 この点にいち早く着目したのがIT企業ディー・エヌ・エーだ。同社は昨年、自動運転の技術開発で定評のあるZMPとともに、その名もロボットタクシーという会社を設立。トヨタ・エスティマを改造した自動運転車で公道での実証実験を始めている。

 さらに同社は今年7月、フランスのベンチャー企業が開発した12人乗りの無人運転電動小型バスを走らせる、新たな交通システムを発表した。最初は公園や大学構内などでの運行に留めるそうだが、将来的には公道走行を視野に入れているだろう。

photo ディー・エヌ・エーの無人バス

 過疎地は人やクルマが少ないので、自動運転車の走行に適している。特区制度を活用し、一定の集落内での運用を認可していけば、高齢者をはじめとする住民の移動は楽になるし、自治体側は交通関連予算を切り詰められる。一極集中が進む東京を基準にして、公共交通を判断してはいけない。

 自動運転、ライドシェアを含めたタクシーやバスの改革は、まず過疎地から進めるべきだろう。

筆者プロフィール:森口 将之

1962年東京生まれ。モータージャーナリスト、モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本デザイン機構理事。日本自動車ジャーナリスト協会、日仏メディア交流協会、日本福祉のまちづくり学会、各会員。著書に「パリ流 環境社会への挑戦」「富山から拡がる交通革命」「これでいいのか東京の交通」などがある。


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