無名な店ばかりなのに、客が集まる商業施設が浅草にあった繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(3/4 ページ)

» 2016年07月28日 06時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

「マイナー」が武器

 品ぞろえ以外にもいくつかの強みがあります。私なりに分析すると、まるごとにっぽんは以下のような特徴があると思います。

出店している店はかなりマイナー、だからおもしろい

 特徴は何と言っても、それぞれの店の「マイナーさ」です。

 経営コンサルタントとして私はこれまで25年にわたって数千店舗以上の店を見てきたため、それなりの自負はあったのですが、それでもほとんど知らない店や知らない地域ブランドばかりでした。それもそのはず。出店している50店舗のうち、「約半数が初めて実店舗を構えた」というのですから、知らなくて当たり前です。さらに約8割の店舗は東京初出店でした。

 既にブランドが確立された著名な商品ではなく、これまで地方に行かなければ手に入らなかった逸品を販売。それによって地方の農家や漁師、事業者などに経済効果をもたらす施設にしたいということですから、狙いも明確です。

 今の消費者はどこかで見たことがあるものに興味を持たなくなりました。特にネットでさまざまなものがすぐに買えるわけですから、店舗で購入したくなるものは「わざわざ感」がないと駄目です。その点で、マイナーで手に入りにくいというのは大きな武器になります。

 これは一見するとデメリットのようですが、まだ世に出回っていないし誰も知らないけれど、品質が良くておいしい。地元の人しか知らない名品、名産が手に入る。こうしたキーワードがあると多くの消費者は希少性を感じて興味を持ちます。

 そのため、まるごとにっぽんは、大手商業施設では流通が難しい小ロット商品を直営ゾーンで販売するような販路開拓支援、店舗内装と什器をまるごとにっぽんが用意することで、初期投資を抑えたテナント出店支援など、出店者に腕試しの場所として活用してもらえる仕組み作りを行って、マイナーな商品ラインアップを拡充しているのです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.