生き残りをかけて迷走する大学の“国際教育”のいま意外と知らない教育現場のいま(3/3 ページ)

» 2016年07月29日 06時00分 公開
[鈴木隆祐ITmedia]
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実体が伴っていない国際教育

 14年6月、文科省は大学の国際競争力を高めるために重点的に財政支援する「スーパーグローバル大学」事業を発足させ、104の応募校からトップ型13、グローバル化けん引型24の国公私立大、計37校を選んだ。23年度まで各大学に1校あたり最高約4億2000万円の補助金を毎年支給するという。

 各大学が現状どの程度“世界に開かれているか”はサイトの該当ページでつかめはしない。実際にキャンパスに足を運ぶのが一番だが、トップ校に選ばれたのは結局は旧帝大と早慶だけ。ここでも大学国際ランキングばかり意識する、文科省の狭量さが目立つ。

 08年度に小学5〜6年生を対象に小学校の英語教育は始まったが、11年度には小5から必修となった。現在18〜19歳の大学1年生はその対象内に入る。私もいくつかの小学校で実践は見てきたが、単純な英語遊びか、従来型の座学かに分かれ、欧米では当たり前のアクティブ・ラーニングの形態を取っていないことが気になってはいた。

 そのような状況で小3年からの必修化が20年度に完全実施される。移行期間を考えると、学校によっては18年度から段階的に実施されるはず。そこでまた英語教育の早期化に関する論議が沸騰するはずだ。

 が、ここまで読んでくださった賢明な読者なら分かるだろう。争点は英語を始める時期ではない。実体が伴っていない国際教育を推進するくらいなら、日本語をこれまでの倍の質と量で教えていくことの方がまだ重要だろう。昨今、「知識基盤社会」とも叫ばれるが、知識はいつの時代でも社会の分母であり、それはまず母国語で共有されねばならないのだ。

筆者プロフィール:

1966年長野県軽井沢に生まれ、東京に育つ。法政大学文学部日本文学科在学中より出版社に籍を置き、雑誌、ムックなどの執筆・編集に従事。教育やビジネスをフィールドにし、『『通販だけがなぜ伸びる』『名門高校人脈』『名門中学 最高の授業』『「授業」で選ぶ中高一貫校』(いずれも学研新書)などの著書がある。趣味は登山、野球観戦など多彩だが、食べ歩きはライフワークで、『東京B級グルメ放浪記』(光文社知恵の森文庫)はその代表作。


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