“1人1台iPad”で変わる小学校教育――ゲーム感覚で教室に活気公立校でもここまでできる(1/2 ページ)

» 2014年02月14日 16時00分 公開
[池田憲弘,Business Media 誠]
photo タブレットでの学習に真剣に取り組む児童たち

 「やった! 1位だ!」「先生、6000点超えたよ」「負けるかと思ったー」

 放課後の教室に小学1年生の声が響き渡る。まるでゲームで遊んでいるかのような盛り上がり方だが、彼らはiPadを使って勉強しているのだ。

 東京都多摩市立東愛宕小学校は2月13日、iPadを使った「授業外学習」を報道向けに公開した。同小学校は2013年10月から児童1人につき1台のiPadを貸与し、授業で活用している。校長の松田孝氏は「iPadを利用することで、基礎学力の向上を図るとともに、共同学習をする力やプレゼンテーション力を伸ばせる」と述べる。

 当日公開した授業外学習では、子どもたちはディー・エヌ・エー(DeNA)が開発した通信教育アプリ「アプリゼミ」を使い、国語と算数を学んでいた。同小学校はDeNAと協力し、2014年3月下旬に配信する小学1年生向けコンテンツの評価テストを行っており、4月から本格的に授業外学習に導入する予定だ。

 子どもたちはアプリに熱中して真剣に取り組み、自分の得点を自慢したり、友達同士で得点を競い合っていた。児童の「先生、もうこれバッテリーなくなっちゃった」という声を聞くと、彼らはデジタルデバイスに慣れ親しんだ世代なのだと痛感させられる。

photophoto ひらがなをなぞり、お手本通りかけたかどうか100点満点で採点される(左)。総合得点の結果を祈りながら見る子も(右)
photophoto 点数を友達に自慢する子も多数見受けられた。校長の松田氏は「誰しもできたら見てもらいたいという欲求がある。こうやって自慢しあえる環境を作れればいい」と話した(左)。iPadを充電する通称「充電部屋」もある(右)

ゲーム要素を取り入れて、勉強を楽しく

photo アプリゼミの総合プロデューサーであるディー・エヌ・エー 床鍋佳枝氏

 最近では、小学校の学習にタブレットを活用する動きが出てきており、“タブレットならでは”の特徴を生かしたさまざまな教材が登場している。DeNAのアプリゼミはソーシャルゲーム事業で培ったノウハウを活用し、いかに子どもたちが“楽しく”学べるかを重視したコンテンツの作り込みが特長だ。松田氏も「点数が出ると子どもの意欲が高まるし、基準も客観的だ。ゲーム感覚で楽しめると同時に、考え方や概念もしっかりと学べる仕組みになっている」と評価する。

 アプリゼミの総合プロデューサーであるディー・エヌ・エー 床鍋佳枝氏は、「タブレットを使った学習はインタラクションがある。一方的に教えられるのではなく、児童がタブレットを操作してから、すぐに結果をフィードバックできる。答えだけでなく、思考の経過も評価しやすい」とタブレット学習のメリットをアピールした。

 教材の企画・監修は教育番組を多く手がけるNHKエデュケーショナルが担当。さらに日立が設立した製品の評価機関「ブレインサイエンス審査会」と協力し、教材の学習効果を科学的に確認した。「学習効果を高めるため、細かいUIにも気を配っている。例えばステージをクリアしたときに、スタンプを押す演出があるかないか、という点でも学習効果は変わってくる」(床鍋氏)

 アプリゼミの活用を通じて得られたデータは、学習効果の分析や研究に使うほか、アプリの改善にも役立てるという。床鍋氏は「問題ごとの正誤率などのデータはすぐに取れる。アプリのシステムを変えるには時間がかかるが、難しい問題には補足をつけるといった改善はすぐに行える。また個人の習熟度に合わせたコンテンツ提供といったシステムにも活用できる」と述べた。

photophoto アプリゼミの未就学児向けコンテンツは無料で提供している。美容院をイメージしたゲームは、数を2つに分解する概念を(左)、なぞなぞのゲームは遊びながらひらがなを覚えられるようになっている(右)
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