アウトプットイメージを共有する、もうひとつの方法を教わったのは、経営コンサルティング会社の経営者からだった。
コンサルティング会社も、大量の資料が行き交う職場だが、それだけにイメージ共有は極めて重要になる。多忙な中で、イメージと違うものが上がってきてしまったら、ロスは発注者としても、仕事の受け手としても大きい。
そこで彼が強く意識していたのが、「サンプル」だった。仕事を受ける側のときには、発注者から必ずサンプルをもらうようにしていた。サンプルとは、過去にあった似たようなアウトプットだ。実物に近いものや、似た雰囲気のもの、リアルに参考になるもの、見本になるものを一緒に見るのである。そうすることで、アウトプットイメージがそろえやすくなるのだ。
書類を依頼されたとき、過去に同じようなものがあったとすれば、一目瞭然である。A4サイズの紙にまとめる、と一口に言っても、びっしりと書くものなのか、要点を箇条書きにするものなのか、まったく異なる。しかしこれも、サンプルを共有すれば、ズレることはない。
だが、うまくサンプルが見つかればいいが、必ずしもそういうわけではない場合もある。発注者がサンプルを持っていないこともあるし、自分で過去のサンプルを思い浮かべられない場合もある。
そこで彼は何をしたか。これは、さすが経営者に登り詰めた人物はやることが違う、と感じたのだが、例えば、組織を変わったときなど、その組織にある過去の書類のすべてに目を通した、というのである。
そうすることで、その組織では過去にどんな書類がやりとりされていたのかが理解できる。また、書類にどんな傾向があるのかも分かる。何か仕事をお願いされたとき、「ああ、あの書類の感じかな」ということも理解できるということだ。
それこそ多くのケースで、組織では過去に似たようなものを作っているものだ、と彼は語っていた。だから、過去の書類をすべてチェックすることには意味がある。しかも、書類に目を通すことで組織のことがよく理解できるのである。
取引先から提出物を求められるときにも、「もし何か見本のようなものがあれば」「類似物や参考にできるものはありますか」などと、何かサンプルになるものはないか必ず確認していたという。
取引先とて、ピント外れなものを出してもらっても困るだけである。できるだけ協力してくれたという。そうすることで、相手が求めるものを確実に提出することができたのである。
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