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» 2016年09月08日 06時00分 公開

加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾:豊洲新市場の土壌汚染はどのくらい深刻なの? (3/4)

[加谷珪一,ITmedia]

建物内の汚染物質濃度は?

 一連の調査結果を見る限りでは、汚染の範囲は局所的であり、豊洲新市場全域に汚染が広がっている状態ではないと解釈できる。ただ、そうなってくると評価結果の判断は逆に難しくなってくるかもしれない。どこまでの範囲なら問題ないとすればよいのかは人によって感覚が異なるからである。

 土壌が汚染されている場所に施設を作る場合、一般的には以下の3つが懸念される。一つは、汚染物質が何らかの形で気化して建屋内に入り込む可能性である。もう一つは地震による液状化で、こうした地下の汚染物質が一気に地上にわき出てくるリスク。3つ目は地下水によって別な場所に汚染が運ばれるリスクである。

 東京都では新市場の建物が完成したのち、建屋内の空気についても汚染調査を実施している。それによると、水産仲卸棟におけるベンゼンの濃度は最大で1立方メートルあたり0.0012ミリグラム、水産卸棟は0.0006ミリグラム、青果棟が0.0019ミリグラムとなっていた。土壌と地下水の汚染エリアが集中していた水産仲卸棟と青果棟の濃度が高いが、環境基準値は0.003ミリグラムなので基準値は全てクリアしている。

 また、近隣の大気におけるベンゼン濃度と比較すると、この値は特別に高いわけではない。豊洲からもう少し都心に近いところにある中央区晴海の大気モニタリングの結果(2014年4月〜2015年3月)では、大気中のベンゼン濃度は最大0.0022ミリグラムとなっている。

 土壌汚染のあった場所にある建屋内においてベンゼン濃度が高いことを考えると、土壌汚染の影響が顕在化している可能性が高いが、その値は他の場所の外気と大差ないレベルである。一連の調査が適切であるならば、建屋内の空気汚染については、今のところ、それほど深刻とはいえないだろう。

 液状化と地下水について東京都では、液状化対策の工事を実施済みであり、地下水については浄化措置を行い、周囲に遮水壁を設置する工事を行ったので問題ないとしている。一連の工事に妥当性があるのかについては、地下水や地震の発生という自然を相手にしたものであることを考えると、完璧な答を得ることは難しそうである。

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