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» 2016年09月27日 07時55分 公開

700万円を遊興費に使った市議が、メディアに「老後の不安」を漏らした理由スピン経済の歩き方(2/5 ページ)

[窪田順生,ITmedia]

中川さんの巧みな話術

支援者と飲むのも政治家の立派な仕事!?

 支援者と飲むのも政治家の立派な仕事だとかばう人もいるが、選挙対策を現職議員が税金でまかなうのは明らかにおかしい。純粋に酒が好きならばなお、議員歳費(給料)から捻出するのが筋だ。そういう意味では、スケールは違うが、24億円を横領して高級クラブで豪遊後、タイへ逃亡した長野県建設業厚生年金基金の元事務長とやったことの本質は変わらない。

 にもかかわらず、この記事の見出しは『議員年金廃止、老後に不安 飲み代、一晩で何万円にも 富山市議辞職の元議長』――。中川さんの巧みな話術によって、世間一般の「横領犯」とはかなり異なり、ヘタをすると「そりゃ、年金がなくなったら不安だよなあ」という共感も与えかねない論調になっているのだ。

 そもそも、議員年金というのは、国民年金や厚生年金とは別にもらえるボーナスみたいなもので、在職12年ぽっちで公費負担4割と、あまりにおいし過ぎるのでやめましょうという話になった「議員特権」だ。おまけに中川さんには、毎月60万円の議員歳費があった。「老後が不安で、うう」なんて言い訳は、『こち亀』の両さんが部長に怒られたときの弁明のように芝居がかっている。

 つまり、この記事は6期当選の「ドン」に完全に一杯食わされてしまったのだ。

 こういうことを言うと、マスコミ関係者に限って、「いや、読者受けしそうな言い訳だから、たまたま整理部が見出しにつけただけだよ」とムキになって否定するが、読者にはそういう内輪の話は関係ない。状況から考えれば、中川さんが確信犯的に「議員年金廃止が不正のきっかけ」という方向づけをした可能性は高い。

 今回、横領ナインの悪事に白日のもとにさらされたことで引っ込めたが、実は富山市議会では、市議報酬を中核市では全国最高の月額70万円とする条例を進めており、6月に議会で可決された。普通のサラリーマンで、賃金がなかなか上がらない中で一気に10万円アップするという暴挙に出た根拠は、「議員年金」である。

 これが2011年に廃止されたことで、富山市が負担する毎月約10万円が浮いた。だからその10万円を我々議員にちょうだいなというロジックで、この旗振り役が中川さんだ。『批判が高まる中、メディアの取材に現在の報酬では苦しいことを強調した』(朝日新聞)という。

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