テーマは「エイジング」 資生堂がアートイベントを主催するワケ

» 2016年10月31日 14時21分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 資生堂主催のイベント「LINK OF LIFE エイジングは未来だ 展」(10月28日〜11月3日)が都内で開かれている。テーマは「エイジング」(加齢、成熟、老化)で、資生堂リサーチセンターを中心に、さまざまな企業やアーティストが参加している。資生堂がアートイベントを開く理由はなんだろう。また、他企業が参加するメリットはどこにあるのだろうか。

 「LINK OF LIFE」は2015年に続き2回目の開催。前回は「さわる。ふれる。美の大実験室 展」とテーマを掲げ、資生堂とそのパートナー企業が組んで22の作品を生み出した。来場者は6日間で4000人に上り、資生堂の内部だけではなく、外部からも「プロジェクトを続けるべきだ」と声が上がり、第2回の開催が決まった。

都内で10月28日から開かれているイベント「LINK OF LIFE」

資生堂がアートイベントを開く理由

 資生堂はなぜアートイベントを開くのか。理由は大きく3つある。

 1つ目はメッセージの発信だ。イベント広報担当者は「エイジングという言葉には、ネガティブなイメージが生まれている。年を取っていくことや、成熟していくことに対して、ポジティブな気持ちを抱いてほしいというメッセージがあります」と語る。

 2つ目は、メッセージに賛同する企業や、開発時に協力する企業とパートナーシップを築くこと。そして3つ目は、社員のアイデアやメッセージを形にする機会を作ることで、新たなプロジェクトや新製品開発につなげる狙いもある。

 例えば、「ココロノイロ」は“心の動きの可視化”に着目した作品だ。アイデアを生み出したのは、資生堂リサーチセンターでヘア製品開発に携わる鴛渕孝太さん。体験者は心拍センサーを装着し、心拍数を解析される。特定の匂いを嗅いだ時に、もしくはある写真を見た時に、どんな気持ちになるのか? リラックスから興奮までの心の動きが、目の前の照明の色によって可視化される仕組みだ。

「ココロノイロ」。リラックスすると青系統に、興奮すると赤系統に変化する

 「匂いや刺激に対する反応は、人によって違う。Aさんがリラックスする香りや感触は、Bさんにとっては興奮するものになるかもしれない。研究を重ねていき、将来は個人の心の動きに合わせた製品を作りたいですね」(資生堂担当者)

参加企業にメリットは?

 こうした企業イベントに他社が参加する大きなメリットの1つは資生堂とのパートナーシップが深まることだが、他にも利点があるのだという。

 日立製作所が制作したアートは「共鳴する心と社会」だ。人工知能に関連した研究に携わる研究員や、社会イノベーション事業に従事する社員が、アーティストやプログラミング企業のキャドセンターとタッグを組んだ。

 参加者がタブレットで質問に答えていくと、回答に応じた花のイラストが出力される。そのイラストは大きなモニターに投影され、他の参加者のイラストと“共鳴”して新たなイラストに変化する。ゆっくりとたえず変化して成熟する社会と、個人個人のつながりが新しいアイデアを生む様子を、アートで表現している。

変化し成熟する社会と個人とのつながりを描いたアート「共鳴する心と社会」

 「このように他企業やアーティストと協同する作品は、最初からビジネスになるわけではないですが、これまで付き合いのなかった企業や人とつながり、新しい価値を生み出す可能性があります。また、基礎研究をやっているメンバーにとっては、外に目を向け、新しいアイデアと触れ合うことで、モチベーションを上げる効果も期待できるのではと思っています」(日立製作所担当者)

 他にも、サントリー、無印良品、ダイキン工業、ハウス食品、コクヨなどが参加している。イベントは11月3日まで、東京・銀座の資生堂銀座ビルなどで開催中。

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