トヨタ・ダイハツのスモールカー戦略が始まった池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)

» 2016年11月14日 11時07分 公開
[池田直渡ITmedia]

乱戦の最中に出る新型車

 さて、トヨタを巡る絵柄は、こいういう息の抜けない戦国状態にある。状況が急速に発展する中で、今年8月1日のダイハツ完全子会社化(関連記事)以降、初の小型車の発表があった。スケジュールから言って、このクルマの開発開始はまだ100%子会社化の話すらなかったタイミングだと思うが、周囲からはアライアンスの新形態に移行して初めてのクルマと見られることは、トヨタもダイハツも熟知している。IoT以前の問題として、それらの技術が搭載されるクルマが良くなければ話にならない。

 ダイハツにしてみれば、これは伸るか反るかの局面だ。トヨタは小型車の開発生産をダイハツに一任すると言っている。ここで成功すれば、世界ナンバーワン小型車メーカーへの道が約束されるし、不甲斐ない成果しか出せなければ、小型車担当として申し分のない実力を持つスズキがアライアンスの中にいる。交代要員は既に用意されているのだ。

 さて、11月9日にトヨタとダイハツは新型車を発表した。ダイハツ版は「トール」、トヨタ版は販売店別に「ルーミー」と「タンク」が用意される。ルーミーはトヨタ店とカローラ店、タンクはトヨペット店とネッツ店なので、販売台数はルーミー→タンク→トールという順になるはずだ。

インパネのデザイン。先に出たムーブ・キャンバスのデザインと比較すると、少々古い インパネのデザイン。先に出たムーブ・キャンバスのデザインと比較すると、少々古い

 さてこのクルマは一体何かと言えば、軽自動車税の増税以来、振るわない軽の販売を背景に、「軽マーケットから流出したお客をしっかりキャッチする」ためのクルマである。つまり、軽の直上にラインアップする小型車で、ダイハツの軽の主力であるムーブの顧客をつなぎ止めることが主目的だ。しかしそれはまた、同時にトヨタグループの小型車の実力が問われる息詰まる局面でもある。

 この新型車に対してダイハツの上田亨上級執行役員は「軽を基点としたスモールカーづくりを追求することで、軽自動車とコンパクトカー双方のレベルアップを図る」と発言している。つまり、ダイハツの技術のコアバリューは軽自動車で培った良品廉価であり、それを小型車に持ち込んで市場の活性化を図るということだ。

軽からの乗り換えに違和感がないコンパクトなボディでありながら、小型車ならではの広さも求められる 軽からの乗り換えに違和感がないコンパクトなボディでありながら、小型車ならではの広さも求められる

 嶋村博次チーフエンジニアは「家族の笑顔を支えるクルマを実現する」という。ちなみに嶋村氏はこれまで手掛けてきたクルマの経歴がなかなかおもしろく、ミラ/ムーブをスタートに初代ヴィッツ、初代パッソ/ブーン、プロボックス/サクシードのビッグマイナーチェンジなど、いろいろと話を聞いてみたいクルマを担当している。

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