こんなモノまで? フリーズドライの開発裏アマノフーズの生き字引に聞く(2/3 ページ)

» 2016年12月12日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

新しい発見を求めて

 みそ汁の開発当初、フリーズドライに適した厚さの油揚げがなかったことから、豆腐屋と一緒に油揚げを作ることからスタートした。試行錯誤を経て商品化にこぎつけた喜びを味わい、「何でもやってみる」「ないものはつくる」というスタイルを確立していった。

 苦労して作り上げた、思い入れのある商品も多い。例えば、ナス入りのみそ汁だ。当初、皮の色によって、湯で戻すとみそ汁が真っ赤になったり真っ青になったりした。そこで、きれいな色で提供されるナスの天ぷらをヒントに、素揚げしたナスを使って商品化。しかし今度は、ナスが「カビのような色」だとクレームを受けた。

 ナスの加工方法を変えようと、さまざまな食品加工会社を探したところ、海外の会社を探し当てた。その会社であれば、1本1本手で切る方法でナスを加工できることから、ナスがつぶれることなく、きれいな皮と身の色を保ったままフリーズドライに加工できた。「ここまで1年半かかった。思い出のナス」と島村さんは振り返る。

photophoto フリーズドライのナスのみそ汁

 アマノが商品に求めるハードルは高い。食べる前にフライパンで煮立てて作る商品を試作したところ、「湯を入れてワンタッチで食べられるのがフリーズドライ」という意見から却下された。食べる前の簡単な調理が加われば商品化できるものもあるが、求めるのはワンタッチの手軽さ。そのぶん、開発は難しい。

 「新しい発見がまだまだある」と話す島村さん。餅やハマグリ、フグなど、商品化に成功していない食材はたくさんある。便利でおいしいフリーズドライ商品に対するこだわりを変わらず持ち続けている。

photophoto フリーズドライのとんかつ(左)と一人鍋

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