ビジネストレンド温故知新

2017年、日本の株式市場はこう動く“いま”が分かるビジネス塾(3/4 ページ)

» 2017年01月04日 06時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

自動車産業は大きな曲がり角を迎えている

 特に自動車業界にとっては、2017年は大きな転換点となる可能性がある。トヨタ自動車は2016年11月、電気自動車(EV)の開発を担う社内ベンチャーを発足すると発表した。ほぼ同じタイミングで日産自動車は、傘下の部品メーカーであるカルソニックカンセイを外部のファンドに売却すると発表している。あまり大きな話題にはなっていないが、これらの出来事は、見方によっては、従来の自動車産業の姿を根本から変えてしまうほどのインパクトを持っている。

 トヨタはこれまで、次世代のエコカー戦略について、ハイブリッド車(HV)と燃料電池車(FCV)をその中核と位置付けてきた。ところが、世界的にはEVがエコカーの主役となりつつあり、FCVは劣勢に立たされている。これまでEVに消極的だったトヨタが方針を大転換させたのは、北米市場を中心にEV化の流れが強くなったからである。

photo トヨタが展示会で設置したFCV紹介ブース

 日産も同様である。中核部品メーカーを外部に売却するというのは異例の事態だが、日産に大きな決断をさせたのは、やはり全世界的なEVシフトである。今回の売却で得られた1900億円の資金は、三菱自動車の取得費用に加え、EVの開発に投じられる予定だ。

 自動車産業のEVシフトが進んだ場合、既存の自動車メーカーは少々困ったことになる。EVは構造が簡単で、完成車としての付加価値は低い。つまり、製品単体では従来と同じ利益を維持できない可能性が高いのだ。自動運転システムや充電ステーションの設置など、インフラも含めた総合力で勝負する必要があり、大手メーカーにとっての負担は大きくならざるを得ない。市場がこうした状況を先取りした場合には、思いのほか、自動車関連株が上昇しないというケースもあり得るだろう。

 重電業界も似たような状況にある。現在、この業界はIoT(モノのインターネット)への対応が急ピッチで進んでいる。納入する機器類にセンサーなどを搭載し、ネット上でデータを集めてメンテナンスを効率化するという技術である。この分野では、米GE(ゼネラル・エレクトリック)や独シーメンスといった欧米企業が先行しているが、日本勢はかなり出遅れている。

 重電分野は消費者向けの製品とは異なり、顧客がすぐに別のメーカーに乗り換えるといったことはない。だが、IoT分野における主導権を欧米勢に握られてしまった場合、必要なシステムの一部について欧米企業から提供を受けるといった措置が必要となり、場合によっては収益の悪化要因になる。自動車と同じく過度な楽観は危険だろう。

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