電通の過労自殺事件をきっかけに、多くの人が「働き方」について関心を寄せるようになってきた。日本人の働き方に問題があるのは、企業文化の影響が大きいと言われているが、それは結果論にすぎない。多くの企業で長時間労働がなくならないのは、日本企業の生産性が低く、長時間労働をしないと業績を維持できないところに根本的な原因がある。
残業の問題が生産性から来ているのだとすると、AI(人工知能)の普及はこの問題を一気に解決する救世主となるかもしれない。
一般的に、ある国の経済が新興国型から先進国型にシフトすると、それに伴って労働時間は短くなる。先進国は資本の蓄積が厚く、付加価値の高い製品やサービスを提供できるので、長時間労働をしなくても富を生み出すことが可能だ。日本も以前に比べれば、労働時間の絶対値はかなり少なくなった。
厚生労働省の調査によると、日本がまだ途上国型経済だった60年代、年間の総労働時間は平均で2500時間近くもあった。日本経済が豊かになってきた70年後半には2100時間前後まで落ちてきたが、しばらくは、同レベルでの推移が続いている。バブル経済崩壊後、90年代に再び労働時間は減り始め、現在では1800時間を切るまでになった。確かに高度成長期と比較すれば労働時間は減ったものの、先進各国と比較すると日本の労働時間はまだまだ長い。
14年における日本人の年間総労働時間は1729時間だが、仏国は1473時間、オランダは1425時間、ドイツに至っては1371時間と大幅に少ない。例外は米国で、日本とほぼ同レベルの労働時間となっている。ただ米国の1人当たりGDPは日本の1.5倍と圧倒的に多く、比較対象としてはあまり適切ではないかもしれない。
さらに言えば日本の場合、「サービス残業」という独特の風習がある。これは他国にはほとんど見られないものであり、実際の労働時間はもっと長い可能性がある。総合的に考えると、主要先進国の中で、日本は突出して長時間労働が長いと判断して差し支えないだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング