サントリーの26歳エース営業 成果ほぼゼロの3カ月を乗り越え、確立した「9:1」の営業スタイル教えて!あの企業の20代エース社員(1/3 ページ)

» 2025年12月18日 07時30分 公開
[久保佳那ITmedia]

連載:教えて!あの企業の20代エース社員

あの企業の20代エース社員にも「新卒1年目」の頃があった。挑戦、挫折、努力、苦悩――さまざまな経験を乗り越えて、今の姿がある。企業に新たな風を吹き込み、ビジネスの未来を切り開く20代エース社員の「仕事」に迫る。

 飲食店に置けるビールサーバーは基本的には1メーカーのみ。飲料メーカーから見ると「0か100か」の戦いともいえる。いかに他社の牙城を崩し、自社商品を導入してもらうか。そこに営業の難しさと醍醐味(だいごみ)がある。

 大手飲料メーカーであるサントリーで、入社3年目にして圧倒的な営業成果を叩き出した26歳の社員がいる。2022年に新卒で入社した水田和真さんだ。

2022年にサントリーに入社した水田和真さん(画像:サントリー提供)

 飲食店を対象に酒類などの自社製品を提案する「酒類業務用営業」として、関東・甲信越営業本部 新潟支社でキャリアをスタートさせた。3年目には、関東・甲信越営業本部(首都圏を除く)における、年間個人目標の「新規開拓目標店舗数」を半年で達成し、四半期では同エリアでの新規開拓店舗数1位を記録した。

 そんな水田さんに入社後の苦悩と、それを乗り越えて成果を出すことができた営業スタイルについて話を聞いた。

「勇気を出して言ってみる」ことで信頼関係を築く

 学生時代はサッカーに打ち込んでいた水田さん。就職活動で自己分析をした際、自分の武器は「コミュニケーション能力」と「対人スキル」だと認識した。居酒屋で友人と話すことが好きだったことから、そんな場に欠かせない酒類を扱う飲料メーカーを希望し、サントリーに入社。酒類業務用営業は希望通りの配属だった。

 酒類の商流は基本的にメーカーから酒販店、そして飲食店へとつながる。メーカーの営業担当は飲食店へ自社商品の提案をするが、担当の酒販店との連携や信頼は非常に重要だ。酒販店は他社メーカーの商品も扱っているため、信頼関係を築けなければ売り上げを伸ばしていくことはできない。

酒販店の関係構築も不可欠だ(画像:ゲッティイメージズより)

 水田さんはまず1年目にOJTを通じて営業の基礎を学び、2年目からは1人で大手酒販店を担当するようになった。担当酒販が大手だったこともあり、予算は同期と比較して2.5倍ほどあったという。

 「初めの3カ月は成果がほぼゼロの状態が続き、不安でいっぱいでした。目標のプレッシャーに押しつぶされそうでした」

 その状況で水田さんが立ち返ったのは、サントリーの創業精神「やってみなはれ」だ。あれこれ考える前に、まずは仮説を試してみる。その中で最も重要だったのが「勇気を出して言ってみる」ことだった。

 「新規開拓の場面では『厚かましいと思われるかも』と躊躇(ちゅうちょ)することもありました。でも、口に出さなければ何も始まりません。『このビール、うちに変えてください』と言い続けるうちに、それが当たり前の行動になっていきました」

 マインドセットを変える一方で、行動面では「スピード」を徹底した。依頼には必ず1日以内に返信し、担当酒販店に週に1度は顔を出す。飲食店は月60〜70店舗を回るという地道な営業活動で、信頼の土台を築いていった。

 しかし、信頼関係だけでは売り上げは作れない。重要なのはパートナーである酒販店から営業活動に必要な情報を教えてもらうこと。水田さんが実践したのが「9:1の法則」だ。

 「会話の9割は『店長さんがこんな商品を探していた』といった既存店への貢献やフォローに関する話題です。まず相手にメリットを感じてもらった上で、残りの1割で『どこか新しいお店のオープンはないですか?』と新規開拓につながるお願いをする。このバランスを心がけました」

 すると、酒販店の担当が「あの飲食店、新しい酒類を探しているらしい」「今度、新しい店舗ができるらしい」といった、貴重な情報を教えてくれるようになった。こうした酒販店との信頼関係を構築でき、水田さんは無事に年間目標を達成することができた。

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