技術革新は本当に長時間労働をなくすのか“いま”が分かるビジネス塾(2/5 ページ)

» 2016年11月29日 06時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

企業が生み出す付加価値の低さが長時間労働につながっている

 多くの日本人が深夜まで職場に縛り付けられ、残業を強いられているのは、日本独特の企業文化が原因であるとの指摘は多い。確かに、集団主義的な仕事の進め方や、ガムシャラさを過剰に評価する風潮があるのは事実だろう。だが、こうした現象は経済的要因で発生している可能性がある。つまり、企業としてあまりもうかっていないので、ガムシャラにやらざるを得なくなり、結果としてそれが文化になっているパターンだ。

 日本企業の生産性が低いことは以前から指摘されている。日本の労働生産性は先進主要国の中では突出して低く、仏国やドイツ、米国の生産性は日本の1.5倍もある。逆に考えれば、諸外国は同じ仕事を日本の7割の労力で行っていることになる。これは全てを平均した値なので、全体で3割も労力が少ないというのは相当な差と思った方がよい。ドイツの一般的な職場では「定時を過ぎて仕事をするなど考えられない」とよく言われるが、この数字を見れば誇張ではないことが分かる。

photo (出典:日本生産本部)

 生産性の差が何からもたらされているのかという点について、もっとも大きいのは付加価値要因といわれる。つまり日本企業はもうからない仕事ばかりやっており、これが社員を追い詰めているのだ。逆に考えれば、企業がしっかりと利益を出す体質に変われれば、生産性は一気に向上する。

 こうした状況を改善する手段としてにわかに注目を集めているのがAIの活用である。AIを本格的に導入した場合、人手をほとんどかけずに従来と同じ生産を維持できる可能性が見えてくる。そうなってくると、理論上、経済全体の生産性は格段に上昇する。

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