間もなく直面する「2025年問題」を考えるいまが分かるビジネス塾(1/4 ページ)

» 2017年02月09日 06時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

 介護人材の不足に改善の兆しが見られない。介護福祉士を養成する大学や専門学校は以前から定員割れが続いてきたが、2016年度はとうとう50%を割り込んだ。今後、人手不足はさらに深刻化する可能性が高い。介護業界は、団塊世代が後期高齢者となる2025年以降、人材不足が急速に深刻化する「2025年問題」に直面している。

 人材不足の直接的な原因は、介護職員の待遇が良くないことだが、これは介護保険制度そのものの問題であり、事業所単体で対処できる話ではない。日本はこれまで介護の問題を全て先送りしてきたが、こうした場当たり的な対応は限界に達しつつある。介護政策を根本的にどのように位置付けるのか、決断すべきときが近づいている。

photo 日本は団塊世代が後期高齢者となる「2025年問題」に間もなく直面する

間もなく直面する「2025年問題」

 厚生労働省は2015年6月に、2025年に向けた介護人材の需給推計を行っている。それによると、2025年度において全国で必要となる介護職員の数は約253万人。これに対して、現在の状況が継続した場合には約215万人しか人材を確保することができず、約38万人の介護職員が不足することになるという。

 2025年に焦点が当たっているのは、ちょうど団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になるタイミングだからである。75歳を超えると要介護認定を受ける人の数は急増する。実際、2014年度における要介護認定者(1〜5)のうち87%が75歳以上であった。介護される人の数は2025年前後に一つのピークを迎えることになる。

 一方、介護人材は需要を満たすほどには増えていかない。現場で必要な人数に対して、実際に何人の人が働くことができるのかという充足率について見ると、2017年は94%となっているが、年を追うごとに低下し、2020年には91%に、2025年には85%まで下がってしまう。介護に対する需要は増える一方だが、少子化の影響で労働人口が減り、人材の供給が追い付かない状況となる。

 政府はギャップを埋めるための対策を実施するとしているが現実は厳しい。施設で働く介護職員の41%、訪問介護員の78%が非正規職員となっており、非正規に大きく依存する就業形態となっている。また、訪問介護員の32%が60歳以上の高齢者であり、かつ89%が女性で占められている。年齢や男女のバランスという点で大きな偏りがあるが、そうなってしまう理由はやはり賃金である。

 介護職員の平均月収は約22万円となっており、他業種と比較するとどうしても見劣りしてしまう。平均勤続年数は5〜6年程度となっており、人材はあまり定着していない。

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