『水戸黄門』の復活が、あまりよろしくない理由スピン経済の歩き方(5/5 ページ)

» 2017年03月21日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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次の『水戸黄門』は土下座なしで

 そこで提案だが、今度の『水戸黄門』は「土下座なし」でどうだろう。

 見方によっては、印籠を出して「へへっー」というのは、権威主義の極みというか、超強烈なパワハラドラマと言えなくもなくい。モンスタークレーマーたちに店員たちが土下座強要させられるいまの時代、BPO的なリスクもないとは断言できない。

 幸いにも、武田鉄矢さんは「金八先生」のイメージが強くて、権威で人をひれ伏させるよりも、懇々と「理」を説き、間違っていることを教え諭す姿のほうが視聴者的にしっくりくる。ならば、悪人に「人の道」を説いてまわる黄門様の説教旅のほうが良くないか。

 「土下座強要旅」が実はもはや時代にマッチしない、ことはTBSもよく分かっているはずだ。

 2016年2月、『水曜日のダウンタウン』(TBS)で「水戸なら今でも印籠効果あるんじゃないか説」として、水戸駅周辺のマナーの悪い若者を黄門様が注意して平伏すかと検証したところ、「じじい、やんのかコノヤロー」などと逆ギレした若者たちから黄門様たちが謝罪させられたのだ。

 ところが、これは水戸市が「虚偽」があるとしてBPOに意見書を提出している。若者がエキストラだということを伝えず、いたずらに水戸のイメージがおとしめられているというのだ。

 その後、TBSの武田信二社長は定例会見で謝罪。「土下座」をネタにしたら「謝罪」に追い込まれたという笑うに笑えぬ事態となった。

 こういう苦い経験もあるわけですから、「土下座」のエンタメ化は『半沢直樹』で打ち止めにしませんか。ねえ、TBSさん。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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