“コンプラ違反”倒産、16年度は減少 好景気が影響脱税、粉飾決算、偽装……

» 2017年04月10日 15時07分 公開
[ITmedia]

 東京商工リサーチは4月7日、2016年度に脱税、粉飾決算、偽装など「コンプライアンス違反」が原因で倒産した企業は前年度比6.8%減の178件で、2年連続で減少したと発表した。大企業にコンプライアンス順守の意識が浸透したことや、景気が回復したことなどが減少の要因だという。

photo コンプライアンス違反関連倒産の月次推移=東京商工リサーチ調べ

 一方、中小企業では、コンプライアンス違反の発覚による倒産が多発。元代表らが定期購読者に投資を持ち掛けたことが発覚し、出資法違反容疑で逮捕された科学誌出版のニュートンプレスや、震災復興関連の補助金を不正受給していたプリンター製造販売のルキオなどが挙げられる。東京商工リサーチは「中小企業は景気回復の影響を受けにくいため業績回復のピッチが遅く、経営不振から抜け出せなかった」とみている。

photo 2月に破産申請したニュートンプレスの公式サイト

 コンプライアンス違反による倒産企業全体の負債総額は、59.2%減の1145億7000万円と大幅に減少。同社は「負債10億円以上の大型倒産が、18.7%減の26件にとどまったことが影響した」と分析する。

 違反内容別では、行政処分や代表者の逮捕などを含む「その他」が79件(12.8%増)で最多。これに次いで多かったのが脱税や滞納など「税金関連」で、64件(25.4%増)だった。一方、補助金や介護・診療報酬などの「不正受給」は11件(21.4%減)、不正な会計処理や虚偽の決算書作成など「粉飾」は10件(64.2%減)と少数だった。

 産業別では、「サービス業」が63件(35.3%)で最多。以下、「建設業」(26件)、「製造業」(25件)、「卸売業」(20件)と続いた。「経営不振から介護報酬や診療の不正請求などに手を染めたケースや、飲食業での食中毒事故などがみられた」という。

 東京商工リサーチは、「現代の企業は金融機関や取引先に対する正確な情報開示が求められるため、一時しのぎはできない。財務内容を隠ぺいしたまま営業を続けていた格安旅行会社の『てるみくらぶ』も破産に至った。コンプライアンス違反倒産の動向は、景気回復の波に乗れずに業績改善が遅れた企業の一端を映す“鏡”となるため、今後も注視していく必要がある」と提言している。

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