今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
ここのところ、世界規模のサイバー攻撃が大きく報じられている。
5月12日、何者かによって、世界で150を超える国と地域にサイバー攻撃が行われた。この攻撃は「ランサムウェア」を使ったもので、マイクロソフト製のOS「Windows」を標的にし、感染するとすべてのファイルを暗号化して利用できなくする。そしてそれを復元するために金銭を要求するという犯罪行為だ。
スペインのコンピュータ緊急事態対策チームによって最初に報告されたこのランサムウェアは、ロシアやウクライナ、インドや台湾が最も被害を受けており、犯人は北朝鮮やロシアなどに関係があるハッカーらだとする指摘も出ている。
このニュースの大きなポイントは2つ。まず、この攻撃はきちんとマイクロソフト社のWindowsをアップデートしていれば避けられた可能性が高いということだ(サポートが終了していたXPについては、企業はできる限り早く新しいバージョンへの変更をすべきだった)。つまりセキュリティ意識の低さがもたらした問題だったと言える。特に英国の病院などでは治療に影響が出たこともあって、人命にも関わる施設などではアップデートを怠ってはいけないという警鐘になったはずだ。
もう1つのポイントは、このランサムウェアが狙ったWindowsのぜい弱性は、米NSA(国家安全保障局)が密かに作っていたサイバー攻撃ツールで使われていたものだったこと。この攻撃ツールは2017年4月に暴露されており、それが利用された攻撃だった。
史上最悪規模と言われるこの攻撃は、サイバー攻撃の歴史を見ても、重要なケースになる可能性がある。サイバーセキュリティの現状を知るために、今回の事件をじっくりと見ておく必要がある。
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