このように“1人総務”と強調すると、読者の中には「久保田さん1人に負担が集中しているのではないか。それに久保田さんが休んだら、業務が回らなくなってしまうのでは?」と思う人も多いかもしれない。
しかし杉本社長は「クラウドサービスはむしろ属人化を防ぐ」と明言する。どういうことなのだろうか。
「業務の属人化は、『この人のPCでしか確認できない』『この人にしか業務が把握できていない』という状況にあると進んでしまう。クラウドサービスなら、権限を持っているユーザー全員がアクセスでき、業務を把握できます。マニュアルをきっちり作ってくれているので、久保田が休んでいる場合は、僕や他のスタッフがマニュアルを参照しながら一時対応をすることが可能です」(杉本社長)
実際、久保田さんは年に数回有給休暇を取るが、業務は問題なく進んでいるという。また、長期の休みを取る場合や、業務が突発的に増えた場合には、アシスタントサービスの「キャスタービズ」を使い、久保田さんが担当する業務をサポートするという。
さらに、クラウドサービスのメリットとして杉本社長が語るのが「負荷の分散」だ。例えば経費精算。「領収書を溜めてしまった。月末にまとめて申請しないと……」という経験をしたことがあるビジネスパーソンは少なくないのではないだろうか。そういった申請が社の中で常態化すると、月末の総務の負担は非常に重くなってしまう。締め日が近い中で差し戻しなどが発生すると、どちらにとってもマイナスは大きく、ますます経費精算が面倒になる……。
「クラウドサービスはスマートフォンからでもアクセスできるので、帰りの電車の中で申請が終わります。そうすることでフロントエンド側の負担も減りますし、処理するバックオフィス側の負担も分散するんです」(杉本社長)
バックオフィス業務のほとんどをクラウド化することが可能になったのは、クラウドが適した業務形態であることや、杉本社長がトップダウンで導入を進めたことが大きい。規則が多く、既存のシステムが複雑に入り組んでいる大企業では、積極的な導入が難しい面も否めない。
「それでもビジネス全体の流れとして、今やクラウド化は避けられない。フリーアドレスやリモートワークなどの働き方改革は、業務に必要なデータがクラウドにあるからこそできることです。できればトップダウンで、それが難しければリーダーが進んで“お試し”をしてみて、業務の効率化を目指すといいと考えています」(杉本社長)
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