加速するクラウド化 影響を受ける仕事は?“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)

» 2017年06月08日 06時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

 近年、企業のITシステムが次々にクラウドにシフトしているが、2017年は大きな節目の年となりそうだ。メガバンクである三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がAmazon.com(アマゾン)が運営するAmazon Web Services(以下、AWS)への移管に向けて動き始めたのである。ITシステムのクラウドシフトは国内のITサービス産業に大きな打撃を与えるだけでなく、それを利用する企業のカルチャーも変えていくことになるだろう。

photo Amazon Web Services

アマゾンは既に世界的なクラウド事業者

 これまで金融機関のITシステムには、信頼性第一という観点からメインフレームが用いられてきた。最近ではPC系サーバの性能が向上したことから、PCをベースにシステムを構築するケースも増えてきているが、それでも金融機関のシステムは別格とされ、信頼性維持のために多額のコストが費やされてきた。

 各種報道によるとMUFGは、傘下の三菱東京UFJ銀行などが保有するシステムを順次、AWSに移管していくという。検討対象となるシステムに例外はなく、情報系のシステムはもちろんのこと、将来的には預金を管理する心臓部のシステムもクラウド化される可能性が出てきたことになる。

 AWSは急激な勢いで成長している。同サービスの売上高は既に122億1900万ドル(約1兆3600億円)に達しており、世界の企業情報システムにおける中核的存在となりつつある。

 同社は保有しているサーバの台数を公開していないが、データセンター施設に関する部分的な情報などから筆者が推定したところ、600万台程度のサーバが稼働している可能性が高い。

 アマゾンには追い付いていないが、米Microsoftも同様のクラウドサービスを運用しており、2社のサーバを合計すると1000万台以上のサーバがクラウドで運用されていることになる。全世界で稼働しているサーバの台数は数千万台と推定されるので、既に数分の1がアマゾンとマイクロソフトに移管されていることになる。

 国内でもユニクロを展開するファーストリテイリングなど、基幹系システムをAWSに移管するケースが出てきている。前述したように、これまで聖域とされてきた金融機関のシステムがクラウドに移管されるということになると、場合によっては、せきを切ったようにクラウドシフトが始まる可能性もある。

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