実際に企業の社食を運営している会社は、最近の社食をどう見ているのだろうか。また、多様化する要望にどのように対応しているのか。食堂運営大手のエームサービスに聞いた。
エームサービスには、メニューやサービスを開発する研究開発部門のIDSセンターがある。同センターMD企画室長の宮田佳泉氏によると、「最近は社食の在り方が変わってきている。昔は目立たないところにあったが、今は会社のブランディングの場所になっているケースが多い」という。やはり、社食を重視する企業が増えているようだ。
また、社食で提供されるサービス内容に目を向けると、従来の“食堂”というイメージとは異なる、カフェを設置するケースが増えているという。食事を提供する場所に併設する形で、軽食と飲み物を提供するカウンターを設置し、ランチタイム以外も利用できるようにしたコーナーだ。仕事や打ち合わせの場にもなる。また、移転を前提とした仮のオフィスで、厨房を設置できない場合に、簡易的なカフェを設置するニーズもあるという。
多様化するニーズの中でも、必ず出てくるのは“健康”というキーワード。しかし、「健康的な食事を提供してほしい」という要望に応えるだけなら、単調で味が薄いメニューになりがち。そうではなく、「楽しく、おいしい食事で健康への関心を高めてもらう」ことまで狙ったメニュー構成を提案し、差別化を図っているという。
例えば、野菜を中心にしたメニューを提供する「カラフルデリ」というサービス。赤・橙・黄・緑・紫の5色をふんだんに取り入れたメニューで、幅広い世代がカジュアルに健康メニューを楽しめる構成になっている。従来の社食では見られなかったバイキングによる提供スタイルを選択することもでき、マンネリ化も防げる。
また、「健康社食」というサービスには、社食で食事を提供するだけでなく、会社と家庭を“つなぐ”仕掛けがある。それぞれの企業の社員が抱える健康問題を分析して選んだヘルシーメニューを社食で提供。社員はそのレシピと使用している健康食材を持ち帰り、家庭で再現する。社食を通じて、社員とその家族の食生活を見直すきっかけを提供している。
「健康」を重視したメニューを考えるとしても、さまざまなアプローチがある。会社の業務の特徴や社員が抱える課題に応じて、提案の幅も広がっているようだ。宮田氏は「最初は“何をやりたいか”という部分がぼやけているお客さまも多い。パートナーとして、それを突き詰めていくことが役割」と話す。求められるままに食事を提供するだけではなく、企業のニーズをくみ取って提案してくれる、心強い存在になっているようだ。
働きやすい職場づくり、企業価値向上の一環として、社食を改革している企業は、どのような取り組みを実施しているのだろうか。次回から事例を紹介していく。
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