サッポロビールの「愛のスコールホワイトサワー」、予想以上に売れているあの会社のこの商品(2/4 ページ)

» 2017年07月03日 08時00分 公開
[大澤裕司ITmedia]

ジュースすぎずお酒すぎないベストバランスを追求

ブランド担当を務めるサッポロビールの野村祥子さん

 中身の開発については、スコールの甘酸っぱい爽やかな味わいを損なわないことが、何よりも求められた。この点で大きかったのが、スコールで使われている原料と同じものが使えたことであった。

 レシピのつくり込みは、両者が積極的に意見交換を重ねて進められたが、その結果決まったことの1つが、4%というアルコール度数だった。RTDで4%はかなり珍しいが、4%になったのには大きな理由があった。その理由を、野村さんは次のように話す。

 「さまざまなアルコール度数で試作をつくったのですが、どれが一番スコールを再現しているかという観点から検証した結果、4%が一番スコールらしいものでした。それに、お酒すぎずジュースすぎないベストバランスを実現するアルコール度数が、4%だったのです」

 ジュースに近いと、スコールを飲めばいいことになる。しかしお酒に近いと、スコールのイメージから離れ、ファンの期待を裏切ってしまう。絶妙なバランスが求められた味づくりの中で、ひたすら試作をつくっては両者でテイスティングを行って、ベストバランスを探っていったという。

 スコールのイメージを再現するのは、パッケージでも同じだった。しかしその一方で、「スコールとまったく同じでもよくないので、お酒らしさを出すことも重要でした」と野村さん。パッケージデザインを何十パターンもつくり、両者の担当者とデザイナーで絞り込み、残ったものをブラッシュアップしてつくり込んだ。

スコールに対する南日本酪農協同の熱い想いを共有

 中身、パッケージともに、スコールのイメージを裏切らないものが完成した。しかし、それが消費者に受け入れられるかどうかは別問題であった。

 どうすれば一番いい形で売れるのか? この問いに対する答を出すために、サッポロビールは発売前に、西日本の営業マンを南日本酪農協同に集め、決起集会も兼ねた販促会議を実施した。新商品発売前に、わざわざ決起集会を行うことは異例のこと。実施に至った理由を、野村さんは次のように話す。

 「西日本の営業マンはもちろん、スコールのことを知っていますが、西日本出身ではない者も多くいます。子どものころからスコールを知っている人と知らない人に分かれますので、全員の意識を統一する必要があると考えました。そのために、西日本の営業マンが南日本酪農協同に集まり、決起集会を実施することに至りました」

 この合宿ではどうやって販売していくかを話し合っただけでなく、南日本酪農協同の製造部門や営業部門などからスコールというブランドに対する想いを語ってもらったほか、工場見学などを行い、スコールに対する共通認識を醸成。スコールというブランドに対する南日本酪農協同の熱い想いを全員で共有し、成功させるべく商談や販促に取り組んでいくことになった。

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