企業は時間、コスト、労力をかけて商品を開発するが、ヒットし成功を収めることができるのはごく一部。しかも、ヒットしても注目されるのは、大手企業各社の主力事業・商品ではないだろうか。それ以外のヒット商品――(1)中堅・中小企業、ベンチャー企業が生み出したもの、(2)地域限定のもの、(3)大手企業でも主力事業・商品に隠れて目立たないものは、なかなか注目されにくく、「知る人ぞ知る」といった感が否めない。そこで本連載では、これら3つのヒット商品にスポットを当て、誕生の裏側から見えたヒットの理由と今後の事業展開などを明らかにしていきたい。
ミズノといえば日本を代表するスポーツ用品メーカー。そんな同社がつくるシューズといえばスポーツシューズをイメージする人が多いと思われるが、実は現場の作業者が作業時に履くプロテクティブスニーカーもつくっているのをご存じだろうか。しかも、それが現在、かなり好評で、高い支持を集めているという。
好評を博しているプロテクティブスニーカー名は「オールマイティ」(オープン価格)。2016年3月に発売され、日本保安用品協会(JSAA)が制定したプロテクティブスニーカー規格・普通作業用(A種)認定品である。規格が定める安全性を満たしただけでなく、スポーツシューズの開発で培ったノウハウも投入して耐久性と機能性を充実させたほか、ファッション性も高めたのが特徴だ。
一部のスポーツシューズブランドは、プロテクティブスニーカーを発売しており、ホームセンターや作業用品店などで商品が並んでいる。ミズノがこの分野に参入したのは、スポーツ以外の分野を強化する方針があったからだ。同社は2013年に、生活分野や健康分野に進出を始めたが、オールマイティを開発した経緯は何か?
「プロテクティブスニーカーに進出したのは、ワーキング分野の成長性が見込めたからでした。現場で働かれている方々はプロテクティブスニーカーに対し、機能や安全性はもちろんのこと、履き心地やファッション性に対する要求が高くなってきています。当社にはスポーツシューズで培ったノウハウがありますので、これを生かせば、現場で働かれている方々に喜ばれるモノを提供していくことができると判断しました」
こう話すのは、オールマイティの企画を担当した稲岡実氏(ライフスタイルスポーツ事業部 事業企画部 健康・生活者ビジネス推進室 専任次長)。以上のような背景から誕生することになったわけだが、プロテクティブスニーカーはミズノにとって初めての商品。分からないことだらけだったので、まずは作業現場などを訪ね、プロテクティブスニーカーに対する意見をヒアリングしていった。その結果から、「安全性を満たしミズノらしさをプラスすれば、快適に仕事ができるモノが提案できるのではないか、という感触が得られた」(稲岡氏)という。
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