サッポロビールの「愛のスコールホワイトサワー」、予想以上に売れているあの会社のこの商品(1/4 ページ)

» 2017年07月03日 08時00分 公開
[大澤裕司ITmedia]

あの会社のこの商品:

 企業は時間、コスト、労力をかけて商品を開発するが、ヒットし成功を収めることができるのはごく一部。しかも、ヒットしても注目されるのは、大手企業各社の主力事業・商品ではないだろうか。それ以外のヒット商品――(1)中堅・中小企業、ベンチャー企業が生み出したもの、(2)地域限定のもの、(3)大手企業でも主力事業・商品に隠れて目立たないものは、なかなか注目されにくく、「知る人ぞ知る」といった感が否めない。そこで本連載では、これら3つのヒット商品にスポットを当て、誕生の裏側から見えたヒットの理由と今後の事業展開などを明らかにしていきたい。


西日本限定で販売されている「愛のスコールホワイトサワー」

 愛のスコール――。ご存じの方は近畿以西の西日本にお住まいか、西日本出身であろう。

 分からない人のために解説しておくと、愛のスコールとは「スコール」という乳性炭酸飲料のキャッチフレーズ。スコールは、宮崎県都城市の南日本酪農協同が開発し、1972年の発売以来、九州や関西など西日本一帯で愛されてきた。

 このスコールに注目したのがサッポロビール。南日本酪農協同とコラボレーションし、「愛のスコールホワイトサワー」を開発した。2017年3月14日のホワイトデーに発売された愛のスコールホワイトサワーは、西日本(近畿、中国、四国、九州、沖縄)限定販売のRTD(栓を開ければすぐ飲めるアルコール飲料のこと)。スコールの特徴である甘酸っぱい爽やかな味わいを生かしてつくられた。誕生の背景にあったのは、サッポロビールが南日本酪農協同に送った熱烈なラブコールだった。

スコールがお酒になったら絶対においしい

 「開発のきっかけは、西日本出身の当社社員が、『スコールがお酒になったら絶対においしい』と話したことです。これをきっかけにして、スコールがお酒として楽しめることができれば、ということになり、南日本酪農協同に出向いてこの熱い想いを話させていただいたというのが始まりです」

 このように振り返るのは、ブランド担当を務めるスピリッツ事業部RTDグループ マネージャーの野村祥子さん。野村さん自身は出身が西日本ではないことから、スコールにはなじみがなかったが、これをきっかけに、西日本出身者のスコールに対する強い愛着や熱い想いを知ることになった。2015年12月24日のクリスマスイブに南日本酪農協同を初訪問。愛に縁があるこの日に訪れたのは偶然だったが、交渉はスムーズにまとまった。

 しかし、熱意や強い想いだけで商品はつくれない。市場性などを踏まえて判断する必要がある。

 その意味で言えば、市場動向は商品化に味方した。スコールのような乳性フレーバーのRTDは現在、市場が伸びており、しかも西日本での売れ行きがよかったのだ。西日本でのスコールの強いブランド力と乳性フレーバーのRTDの市場動向から、サッポロビールは勝算アリと判断した。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.