実際のところ自動車のEV化そのものは、日本のメーカーにとってまったく難しくない。トヨタは巨大アライアンスを構築し、ダイハツ、スバル、マツダ、スズキの各社に新規開発したEVのコンポーネンツの提供を検討すると提携会見で意思表示しているし、三菱を含む、ルノー・日産アライアンスもEVノウハウは十分に持っている。ホンダも問題ない。
つまりEVの競争の本質は自動車メーカーではなくインフラ電力の低排出ガス競争である。「やっぱり日本はガラパゴス化だ」と考える必要はない。日本の自動車メーカーはすべてグローバル企業。別に日本のインフラ整備を待つ必要はなく、環境が整った国で売ればいいことだ。
問題はEVのメリットが享受できるほどインフラ発電の環境負荷を改善できる国がどのくらいあるかだが、どう楽観的に考えても、あと20年やそこらでは環境整備が進まない国が膨大にあり、本当はそうした多数派の国でどうやって環境悪化を防止するのかの方が緊急度は高い。
そういう国で簡単に普及できる48Vマイルドハイブリッドや、小型エンジンの燃費改善の方がはるかに世界に貢献するだろうと筆者は思っている。
「トヨタは燃料電池なんてやってるからダメなんだ」とか「いつまでエンジンにこだわっているんだ」と言っている人はトヨタの本質が分かっていない。トヨタは電動か内燃機関かのどちらか1つに賭けるようなことはしない。
全部やるのだ。ディーゼルも小排気量ターボも、HCCIも、ハイブリッドも、プラグインハイブリッドも、48Vマイルドハイブリッドも、EVも。何ならバイオ燃料だって、誰かがやっていることは、漏らさず抜かさず全部やるのだ。そんなことができる会社はトヨタしかない。それがトヨタの末恐ろしいところだ。そんなトヨタに出遅れと言っても何の意味もない。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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