それでもイチローは帰国せず、「生涯メジャー」を貫く赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)

» 2017年08月31日 12時05分 公開
[臼北信行ITmedia]

最高のコンディションづくりに黙々と励む

 正直な感想を言えば、これらの報道はこの時期の風物詩なのかなと思う。古巣のオリックスを含め日本球界復帰がさも決定したかのように断じたり、レジェンドと評されるイチローを劣化したとディスったりすれば、人々の関心を引く。

 オフが近づくとこの手の記事が日本のメディア(特に週刊誌)に掲載されることが非常に多くなってきた。今年で44歳を迎えるのだから、当たり前と言えば当たり前。そして普通に考えれば、とっくに引退していて不思議のない年齢である。

 しかしながら、彼はまだ現実としてメジャーの舞台に立っている。スタメンでの常時出場は厳しい状況となっているが、代打でもこれだけの成績を残しているのだ。類いまれな集中力とパフォーマンスがまだまだ健在とあれば、マーリンズのフロントの見地から判断して契約延長に値すると考える。

 2017年の夏前ごろに「動体視力の劣化」や「運動能力の低下」を指摘する日本の有識者の論評を目にしたことがあったが、年齢面を考えれば「劣化」や「低下」は当然だ。本人だって、それは百も承知であろう。だからこそイチローが今、真剣に取り組んでいるのは大ベテランの域に達した現状においても、100%のベストパフォーマンスをいかんなく発揮する肉体と精神を維持し続けることである。

 全盛期より劣った分は逆にここまで積み重ねてきた経験値がインサイドワークとして、その穴埋めの材料にもなることも彼は無論熟知している。今年で44歳を迎える男がこれほどのプレーを見せられる背景には過去の自分をいつまでも追い求めるのではなく、あくまでも今の自分だからこそできる最高のコンディションづくりに黙々と励む姿があることを忘れてはいけない。

 そのために彼がグラウンド上でのプレー以外においても入念なストレッチを行ったり、あるいは近年自ら取り入れている初動負荷理論に基いたトレーニングに没頭したりするなど、とにかく数え切れないほどある"イチ流"の独特なルーチンワークにはチーム内の誰もが目を見張っている。

イチローは最高のコンディションづくりに黙々と励んでいる(写真と本文は関係ありません)

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