日本は大丈夫なのか 米大使館を苦しめている「音響兵器」世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

» 2017年10月05日 07時34分 公開
[山田敏弘ITmedia]

音波による攻撃とは一体どんなものか

 この音波による攻撃とは一体どんなものなのか。

 そもそもこの騒動は、2015年にキューバと国交を正常化したバラク・オバマ大統領のキューバ政策をひっくり返すと主張していたドナルド・トランプ大統領が、大統領に就任する前後から起きていたと見られている。最初に異変に気が付いたのはキューバに駐留していた米情報機関員で、2017年2月には、米政府側がキューバ政府に対し、米大使館員に問題が発生していることを伝えていた。そしてキューバ政府は捜査を実施したが、何も見つからなかったと発表している。

 その後、米政府も独自捜査を行う。FBI(連邦捜査局)の捜査員をキューバに派遣して捜査を実施したのだが、確たる原因は見つからなかったとしている。米国務省は、外交官の安全を守るというウィーン条約の規定にキューバ政府が違反したとして、5月には駐米のキューバ大使館関係者2名を国外退去処分にし、10月3日には追加で15人のキューバ人外交官をさらに退去処分にした。

 しかしそんな折、米政府関係者がメディアなどでこんなことを述べたのである。

 関係者によれば、攻撃は大使館員の宿舎近くか、内部で行われたと見られている。なんらかのデバイスが用いられ、そのデバイスからは人間の耳では聞き取れない音波が発せられたという。人体に影響を及ぼす超低周波または超音波の武器の可能性があると、米タイム誌などは報じている。

 「音響兵器」と言われるものは、理論的にみると、不快感や痛みを与えたり、最悪の場合は死をもたらすことができるという。

 事実、そうした兵器は世界でも使われている。2005年にはイスラエル軍が「ザ・スクリーム」という音波を発する兵器を使用し、その攻撃によって反体制派などは頭痛を感じたり、胃がねじれたり、膝ががくがくするような被害を受けたという。この兵器は「サウンド爆弾」とも呼ばれた。ちなみにイスラエルは漫画『ドラゴンボール』の「かめはめ波」のような衝撃波を放つ「サンダー・ジェネレーター」という武器も開発している。

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