火星まで一気に100人送り込むSpaceXの新型ロケットとは?宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)

» 2017年10月21日 07時00分 公開
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安全保障市場におけるシェア拡大

 このように派手なコンセプトが目立つSpaceXではあるが、既存の打ち上げビジネスも着実に進展している。既に第1段ロケットの回収と再利用打ち上げに成功して大きなニュースを提供した同社だが、10月に大型通信衛星のEchoStarとIRDIUMを打ち上げる際には、2月に国際宇宙ステーション向けに物資輸送を行った際の機体を再利用した。

BFR(出典:SpaceX) BFR(出典:SpaceX

 再利用ロケットによる打ち上げ成功は3回目であり、オペレーションが徐々に確立してきている。第1段の再利用をすることによるコスト削減インパクトは30%程度と言われているが、現時点では価格にはあまり反映されていないという。

 また、次世代GPS衛星の打ち上げ契約を取得することで、安全保障市場に切り込んだ同社だが、9月には米空軍の無人スペースプレーン「X-37B」の打ち上げを初めて行った。これまでは米United Launch Allianceが運用する大型ロケット「アトラスV」で打ち上げが行われていた市場だが、米空軍としては実績のあるアトラスVと価格競争力の高いファルコン9の双方を併用することで、リスクとコストを抑える目的があると推察される。

 将来的にはロケット打ち上げ以外の分野への進出も見据える。数百機から数千機の衛星で地球規模の衛星インターネットインフラを構築するプロジェクトでは、昨年ソフトバンクが10億ドルの出資を発表した米OneWebの取り組みが有名だが、SpaceXも同様のプロジェクトを「Starlink」という名の下に進めている。開発拠点を構える米シアトルで人材採用も進む。

 多方面で猛進を続けるマスク氏とSpaceXの動向を注視したい。

著者プロフィール

石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、15年のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。日本初の民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。

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