――なぜ、音彦を世に出そうと考えたのですか?
佐藤さん: 日清食品グループのインターネット通販(EC)サイトがリニューアルしてから1周年を迎えたことを機に、顧客との接点をさらに強化したいと考えたためです。
従来のECサイトは一般的なものでしたが、リニューアル後はより多くの顧客に楽しんでもらえるよう、Web漫画を連載したり、「カップヌードル」を調理できる縄文土器を発売したりとユニークな取り組みを行ってきました。
その一環で、「食に関する課題を解決する」がテーマのプロジェクト「PRODUCT X(プロダクト・ペケ)」を立ち上げ、ユニークなデバイスの開発を進めることになったのです。
「外国人は、麺類をすする音を不快に感じるようだ」という話は、1年前からチームメンバーの間で話題になっていました。
長年麺類を扱ってきた当社は、麺をすするという日本文化を大切にしたいと考えています。そこで、麺をすするという行為をポジティブなものに変えられるデバイスがあれば、世界中のみんなが一緒に楽しくラーメンを食べられると思い、音彦のコンセプトを決めました。
――今後は、商品として本格的に展開される方針なのですか?
渡邉さん: 本当に音彦が広く使われるようになるかというと、正直難しいと思います。ただ、音彦というユニークな商品を機に、ECサイト上で面白い取り組みをしていることを多くの人に知ってもらいたいと考えました。
本気で欲しいと思ってくださる顧客のことを考え、商品化の準備はしっかりと行っているので、単なる“ネタ商品”とは違います。
――音彦を開発する上で、こだわった点や苦労した点があれば教えてください。
佐藤さん: 自然の音を使った音楽制作に定評のあるサウンドクリエイター、清川進也氏にカムフラージュ音の制作を依頼しました。何曲も候補を作っていただいた中で、ジェットエンジンに似たものを採用しました。
当初はシンセサイザーを活用した、ノリのいいリズミカルな音も候補に挙がっていたのですが、すするたびに流れると煩わしいので不採用になりました。いくらリズミカルな音楽が流れても、食べながらノリノリで踊る人はいませんよね。
渡邉さん: 当初の予定では、柄を今の半分くらいの細さにする予定でした。ですが、内部に基板が入りきらなかったので、試行錯誤を繰り返して現在の形になりました。
スマホやカメラと同じで、小型の高性能な基板を採用すると莫大なコストが掛かります。当初の大きさで販売した場合、価格は1本当たり10万円を超えていたかもしれません。
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