後ろから乗れる“車いす型ロボ”「RODEM」登場 先進技術で生活支える家具・家電に合わせて高さ調節(2/2 ページ)

» 2017年11月20日 17時27分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]
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8年の時を経て製品化

 大型レスキューロボット「T-54 援竜(えんりゅう)」など、さまざまなロボット開発を手掛けてきたテムザックがRODEMのコンセプトモデルを発表したのが2009年。リハビリ専門の研究者から「現在の日本の介護補助ロボットは、患者の体をアームで挟んで強制的に立ち上がらせるものなどが多く、負担を掛けている。何とかならないか」と相談を受けたことが開発のきっかけだ。

 その後、耐久性向上のためボールねじをシリンダーに変更したり、シートの形状や素材を改良して座り心地を向上したり、移動を補助するキャスターを排して四輪駆動(4WD)の駆動形式を採用したり――と試行錯誤を重ね、8年の時を経て製品化に至った。

photo T-54 援竜(えんりゅう)

 ただ、高本CEOは「技術面だけでなく、制度や風潮の面も発売の大きな障壁となっていた」と明かす。

 日本では、車いすは「前から座るもので、後ろから乗るものではない」と定義されているため、RODEMは当初、JIS(日本工業規格)の認証を得られなかったという。また、日本では、ロボットの安全性を確立しないまま試乗などを行うことを禁じる風潮があるため、トライ&エラーを繰り返しながら完成度を高めることが難しかったという。

 そこで高本CEOが選んだのが、テストに対して寛容なヨーロッパで安全性を高め、EU(欧州連合)加盟国の規格に適合したことを示す「CEマーク」を先に取得すること。高本CEOらは、開発中のロボットへの試乗とフィードバックを行う民間団体が積極的に活動するデンマークを拠点に開発を進め、CEマークを取得するに至った。

 日本工業標準調査会はこれを受け、優れた技術を持つ製品に特例で短期間でのJIS化を認める「新市場創造型標準化制度」にRODEMを採択。RODEMの製品化に向け、新たに「馬乗り型車いす」という規格を設けた。こうしたプロセスを経て、RODEMは世に出ることが決まった。

photo

 高本CEOは「長らく発表できなかったので、(RODEMのアイデアは)生きてるのか?と聞かれることも多かったが、やっと発表できてうれしい。ゆくゆくは街中にたくさんのRODEMを配置し、体の不自由な方が柔軟に利用できるシェアリングサービスも始めたい。利用後は自動運転で充電ステーションに戻ったり、心拍数などユーザーの体調面の情報を取得できる仕組みも取り入れたい」と期待を語った。

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