なぜスシローは「スイーツ」に力を入れるのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)

» 2017年12月12日 06時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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従来の組織、仕入れに捉われない

 天然魚の性質上、全てのネタを全店に流すことはできないが、北海道で獲れた「生甘えび」(180円)はほぼ全店で出せているそうだ。長崎で獲れた「剣先いか」(180円)、九州、山口などで獲れた「活さざえ」(280円)などを今は提供しているが、その日の漁次第で、海が荒れたら入荷できない場合もある。スシローが魚の情報をいかにキャッチして、100円は無理としても、180円、280円の安価で出し続けられるか。

photo 「剣先いか」(右)と「活サザエ」(左)

 顧客からの喜びの声を聞くと現場のパート、アルバイトの士気も上がり、活気が出るという。その活気がさらなる好業績へと循環していく。

 スシローでは今後、看板であるタイ、ハマチなどの100円の養殖魚の仕入れにメスを入れ、“スシロー魚”を作っていく方針。既に米では、シャリを提供する農家の田んぼに“スシロー米”の旗を立てて、生産段階からの差別化を行っているが、その魚版と言えるだろう。

 いずれにしても同社は、親会社・神明による元気寿司との統合、店舗倍増計画も視野に入れながらも、スシローは安くてうまいという評判を維持するべく、従来の組織、仕入れに捉われない未知の領域へと舵を切った。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。


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