IoTでバス事故防げ KDDI・小湊鉄道が実験運転手の挙動をチェック

» 2017年12月12日 14時24分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 KDDIと、千葉県の鉄道・バスを運行する小湊鉄道は12月12日、IoT(モノのインターネット)技術を活用して路線バスの事故を防ぐ実証実験の詳細を報道向けに公開した。運転席に設置したカメラでドライバーの挙動を撮影し、時刻と位置情報をひも付けて管理者にリアルタイムで送信するもので、「ヒヤリ・ハット」と呼ばれる運転中の危険な兆候を早期発見するのが狙いだ。

photo IoTでドライバーの挙動をチェックする

 カメラが撮影した画像データと、デジタルタコグラフ(自動車の走行時間・走行速度を記録する機器)が取得した走行データを外部サーバに送信し、ドライバーの姿勢・顔の位置・表情の変化などを細かく分析。結果を基に、管理者のPCに「感情の急激な変化がありました」などのアラートを表示する仕組み。わき見や居眠り、運転中のスマホ操作も検知できる。

photo 車内に搭載したカメラ

 アラートを受けた管理者は、無線でドライバーに対応策を指示できる。また、取得したデータを基に、ドライバーの挙動が変化しやすい時間帯や地点を定量的に把握し、「午前10時ごろに停留所付近で驚いた表情をする人が多いが、何があったのか」――といったヒアリングを行うことで、質の高い指導・教育につなげられるとしている。

photo 挙動のチェック結果

 小湊鉄道は5月14〜31日に、千葉県内の営業所で10人のドライバーを撮影し、計290件の挙動の変化を検知。分析の結果、停留所付近で顔の位置がふらつきやすいことや、直進路で驚き・不安・怒りといった表情変化が起きやすいことを突き止めた。結果を踏まえ、ドライバーに停留所付近での飛び出し注意や、直進路での左右確認の徹底を指示し、運行サービスの向上を図っているという。

 KDDI ビジネスIoT企画部の原田圭吾部長は「撮影した映像を時刻とひも付けられるため、ドライバーの緊張状態が午後の早い時間帯に起きやすいことが分かった。ドライバーごとに『ヒヤリ・ハット』の発生傾向に差があることも判明しているため、1人1人に応じた指導を行ってほしい」と話す。

 小湊鉄道 バス部の小杉直次長は「昨年、当社のドライバーが業務中に体調を崩し、意識がもうろうとしたまま運転する事態が起きた。幸いにもドライバーの命に別条はなく、乗客にもけがはなかったが、事故防止に対する取り組みを考え直すきっかけとなった」と背景を説明する。

 「従来はドライバーの記憶などを頼りに運転のアドバイスをしていたが、限界があった。事故が起きてから対処しても遅いが、IoTを活用すると『ヒヤリ・ハット』の事例を集めてケースに応じた対応策を立案し、事故の予防につなげられそうだ」と手応えを話した。

photo 小湊鐵道が運行するバス

 KDDIは今後、実証実験の結果を踏まえてサービスを改善し、商用化を目指す。小湊鉄道は高速バスなどへの導入を検討する。

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