「ブラック企業」なぜ消えぬ “厚労省リスト”の効果とは掲載企業は氷山の一角だ(1/4 ページ)

» 2017年12月30日 07時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 電通で女性新入社員が過労自殺する事件が起きてから、はや2年が経過した。日本政府は残業規制などの「働き方改革」を推進し、賛同する企業も増えてきた。だが、長時間労働や残業代の未払い、セクハラ・パワハラなどが横行する“ブラック企業”は依然として多い。

photo 電通の本社ビル=12月撮影

 労働基準関係法の順法意識を高めるため、厚生労働省は5月、同法違反の疑いで送検された国内企業のリストをインターネット上に公開。電通やパナソニック、ヤマト運輸など大企業も名を連ねる“ブラック企業リスト”として話題となった。

 しかし、公開から7カ月超が経過した現在も、従業員に「36協定」で合意した延長時間を超える違法な長時間労働を課した企業や、従業員に定期賃金を支払わなかった企業などが毎月のように追加されている。

photo 厚労省がネット上に公開しているリスト

 ブラック企業リストは、違法労働の抑止力として機能しているのだろうか。従業員を不当に扱うブラック企業は、なぜなくならないのだろうか。日本企業の労働問題に精通し、企業の労働環境改善に向けたコンサルティングなどを手掛ける“ブラック企業アナリスト”こと新田龍さんに話を聞いた。

ブラック企業リストの効果は?

――厚労省によるブラック企業リストの公開は、どのような効果があったとお考えですか。

photo “ブラック企業アナリスト”こと新田龍氏。企業の働き方のコンサルティングなども手掛ける

新田氏:電通での若手社員の自殺、石井直社長(当時)の引責辞任、リストへの掲載といった一連の流れは、ビジネス界を驚かせたと感じました。

 労働時間を適切に管理しなければ、社長辞任にもつながる“大ごと”に発展し、社名公開という社会的制裁も受ける――と実感し、危機感を覚えた経営者は多いでしょう。

 また、従来は知名度の低い地方の中小企業が労基法違反を起こしても、メディアが報じず明るみに出ないケースが多くありました。ブラック企業リストがこうした企業も掲載し、スポットライトを当てた意義は非常に大きいと考えています。

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