なぜあの商品は売れた? 行列研究所が謎に迫る
インタビュー
» 2018年01月15日 07時00分 公開

「旅する氷結」もヒット:11年ぶり過去最高 キリン「氷結」が超えた壁 (2/2)

[加納由希絵,ITmedia]
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若者を狙った「旅する氷結」

photo キリンビールマーケティング部RTDカテゴリー戦略担当の井本亜香氏

 リニューアル成功の流れに乗って、満を持して世に出したのが「旅する氷結」だ。なぜ「満を持して」なのかというと、この商品は14年にはすでに完成していたからだ。14年といえば、スタンダードの氷結が伸び悩んでいた時期。「スタンダード商品が元気ではないのに新しいものを出すと、どう見られるだろうか。社内で議論になりました」(井本氏)。その結果、発売は先送りに。スタンダード商品のリニューアル後、17年にようやく世に出ることになった。

 「旅する氷結」の主なターゲットは20代の若者。楽しむための選択肢がたくさんある中で、「お酒を飲む」ことを選んでもらうためのきっかけとなる商品にしたかった。「若い人たちは『お酒を飲む』こと自体が目的になるのではなく、『“こういうときに”お酒を飲む』という、気分やシチュエーションが重要になります。それはどんなときか? そこを突き詰めました」(井本氏)

 出てきたキーワードは「楽しい」「わくわく」「開放感」など。そのような気持ちは「外に飛び出していく」ときに味わえる。そこから「旅する」というコンセプトが生まれた。幼いころからインターネットが発達していた20代にとっては、海外の文化や暮らしにも知識やなじみがある。さまざまな地域のお酒の文化を伝えることで、楽しんでもらえるのではないかと考えた。

photo 「旅する氷結」シリーズ。パッケージにはそれぞれの国や地域をイメージしたイラストを使用し、楽しさを強調した

 世界には数え切れないほどのお酒の飲み方がある。何十カ国とアイデアを出して、商品を作り込んでいく過程で、苦労したことの1つがフレーバーの「名称」だ。

 実際に存在するカクテルをアレンジしているのだから、それをそのまま使えばいいのでは、と思ってしまうが、それでその国の雰囲気や味を想像できるだろうか。「有名なカクテルの名前を知っていても、それが飲まれているエリアや味について、意外と知らないことも多いのです」(井本氏)

 そのため、国や地域、果汁を想起させる名称を考えた。例えば、有名なカクテルの名前に果汁や地域の名称を組み合わせた「アップルオレンジサングリア」や「カリビアンモヒート」。一方、カクテルの名前が入っていない商品もある。「マンマレモンチーノ」は、イタリアのお酒「レモンチェッロ」をベースにしている。ライチのお酒「楊貴妃」を使った商品の名称は「ハオチーライチ」だ。名前がついていない、フィンランドのお酒を使った商品は「フォレストベリー」と名付けた。

 その他、「ロコロコパイン」「ピーチアモーレ」「オレンジカウボーイ」があり、いずれもカクテルの名前は入っていないが、味と地域をイメージできる。商品を選ぶ基準は、カクテルの名前よりも果汁の種類。それをイメージしやすく、楽しい雰囲気を出すことを目指した。「商品開発は40代のメンバーが中心でしたが、若い社員にも入ってもらい、一生懸命頭をひねりました」と井本氏は振り返る。

 17年3月の発売当初、約70万ケースの年間販売目標を掲げていたが、結果は大きく上回る190万ケース。井本氏は「ターゲットの20代は全体として飲む量が少ないので、そこまで大きくなるとは思っていませんでした。実際に販売すると、30代の方もたくさん飲んでくださり、広がりがありました」と分析する。

 「旅する氷結」のアルコール度数は4%。氷結ブランド全体としては、9%の高アルコールまで幅広く商品をそろえ、それぞれ需要を獲得している。「RTD商品は伸びていて、飲む人はまだ増えると思います。ですが、それだけでなく、さらに先を見据えて、ブランドそのものの魅力を高めてお客さまを増やしていけるような活動をしたいと考えています」と井本氏。11年をかけて過去最高を更新したいま、次の挑戦が注目される。

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