熊本市内から車で約40分。島原湾に面する熊本県宇土市にカネリョウ海藻はある。「より上質な海藻を」と市場、漁協、漁師など国内外200カ所以上から色もの海藻やもずく、めかぶを買い付け、今や年間2万トンもの海藻商品を販売している。
強みはこの「仕入れ力」だ。足で探し、信頼関係を築き上げてきた仕入れ先があるから、たとえ不作で収穫量が少ない年でも安定して商品を供給できる。スーパーやコンビニエンスストアなど約1000社に卸す1500種以上もの製品の生産にいつでも対応が可能なのだ。
また品質を保ち、商品の安全性を高める加工技術を自社で開発しているのも大きな特徴だ。独自技術によるTHC(高木式加熱冷却機)で加熱殺菌することで、素材そのものの色や風味、食感を生かした加工に成功している。
先代の社長夫婦2人だけで創業し、熊本県の名産「オゴノリ」の仕入れ、販売からスタートして約60年。独自の仕入れルートと加工技術、そして一軒一軒に電話をかけて契約を獲得してきた取引企業との絆を武器に、今後の海外展開に勢いをつける。
国内の取引先が増えるにつれ、熊本本社工場以外の生産拠点が必要になった。興味を持ったのが宮城県だ。めかぶの一大産地であり、関東方面への流通の便も良い。元々あっためかぶ工場が立ち退く話を聞いて、すぐに工場設立に乗り出した。
操業開始予定は2011年3月下旬。そこに、東日本大震災が起こる。「工場は山の上にあり津波の被害は受けなかったのですが、設備は修理が必要でした。立て直しまでは約3カ月かかる。新たに雇用した20人の従業員はただ待つしかありません。余震は続き生活の不安もあると聞いたので宿泊所を用意して熊本に呼び、工場稼働までの就労を可能にしました」と話す高木良將取締役。
無事に工場が稼働し、めかぶ商品の生産は軌道に乗る。当初20人だったグループ会社の従業員は80人を超え、15年にはめかぶ部門だけで30億円以上を売り上げて業界のトップへとのぼりつめた。
また、同社の看板商品「三陸宮城県産めかぶ」は第24回全国水産加工品創業品質審査会で出品総数722品の中から最高賞の農林水産大臣賞を受賞している。「私たちの工場が宮城県の雇用創出につながり、賞までいただけたことは震災後のうれしいニュースでした」
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