【ケース1】
2017年10月9日20時過ぎ。筆者はスズキから借り出したスイフト・ハイブリッドの広報車で国道246号線の下り線を走っていた。青葉台を過ぎ、丘陵を下って恩田川を過ぎた辺りのことだ。片側2車線の内左車線、速度は時速50キロで行儀良く制限速度ぴったり。前後にはほとんどクルマがいない。右車線後方から中型と思しきバイクが近づいてきた。左車線を走る筆者のスイフトをバイクが追い越した瞬間。突如自動ブレーキが作動した。急制動でシートベルトが肩に食い込む感覚をはっきり覚えているので、体感的には0.5Gほどの減速Gがかかったと感じた。
【ケース2】
11月22日15時ごろ。筆者はスイフト・スポーツの広報車で東京駅八重洲口前を走っていた。呉服橋方面から一番左の車線を東京駅前に向かい、八重洲口会館の前あたりで左折渋滞に前方を阻まれたので、右にウインカーを出してそろそろと右車線に合流しようとした。筆者の運転するスイフト・スポーツも、前のクルマも、右前も右隣も右後ろも、一様に早歩き程度の速度で動き続けている。右のクルマが少し前を空けてくれたので、ハンドルを切り足した途端、自動ブレーキが作動した。慌ててクラッチを切りながらルームミラーを確認したら後ろのクルマもちゃんと止まっていてくれて助かった。
以上が筆者が運転していて経験した自動ブレーキの異常作動だ。どちらの車両も約1000キロほど走る中で1度ずつ異常作動が発生した。
さて、ケース1の時点で、筆者はすぐにスズキ自動車に連絡を取って、状況を伝え説明を求めた。この時点ではこうした異常動作の頻度がよく分からない。分からないがそうした異常動作を現認した以上、書かないわけにはいかないと考え、その旨はスズキにも伝えた。
そしてケース2である。ケース1の時は極レアケースの可能性を考えた。機械である限り、異常動作の発生率ゼロはありえないので、頻度が十分に低いのであれば書くにしてもセンセーショナルにならないよう、書き方に注意すべきと考えた。しかし、合計2000キロ程度の走行で、しかも別の車両で合わせて2度発生したとなると、これはユーザーが同じ異常を経験する可能性は極めて高い。問題の重要度は嫌が上にも高くなった。
読者の中にはこの2台の車名を見てピンと来た方もいるだろう。これは昨年末の記事「2017年 試乗して唸った日本のクルマ」(ちなみに「唸った」は編集部による修正タイトルで、筆者が付けたタイトルは「2017年 良かったクルマ」である)の最終確認のために4台のクルマを順次借り出して各車1000キロあまりを長距離テストドライブしたときの話だ。
筆者が記名で「良かったクルマ」としてお薦めしようという場面で、こういう事態に至って、逡巡がなかったわけではない。ただし、筆者の信義に照らして考えれば、機械に100%の信頼性を求めるのは無理筋である。統計上、自動ブレーキが追突事故を8割から9割低減しているという効用に鑑みて、これをむやみに糾弾することは安全技術の進歩に対する叛逆である。ゼロリスクを求めると問題が隠蔽されたり、進化が止まったりしてしまうからだ。
スイフトは、年末の記事に記したいくつかの瑕疵(かし)に加えてこのブレーキのトラブルを除けば、ハイブリッドもスポーツもクルマの出来は確かに良かった。
良いクルマだからこそ、なおのことこの問題をスズキに正式に問い合わせ、以下の点について回答を求めた。
しかし、待てど暮らせど返事が来ない。途中何度も問い合わせたのだが「もう少しお待ち下さい」との返事。一方的な糾弾記事を書きたくないからこそ、フェアにメーカーの言い分を聞いた上で記事化したい。だからスズキの正式見解を求めているのである。そうしたフェアネスはとても大事だが、読者に事実を伝えることもまた優先順位が高い。そろそろしびれを切らして、止むを得ず独自見解で記事を書くかと腹をくくりはじめたところで、やっとスズキから回答が来た。
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