キリンビールが飲食店向けに展開するクラフトビール用サーバ「タップ・マルシェ」が好調だ。2017年に首都圏の1000店舗以上に導入。3月に全国展開を開始すると、1カ月もたたないうちに全国2500店舗にまで広がった。
今後、提供するクラフトビールのブランドを増やし、さらに力を入れる。国内のクラフトビール市場(出荷量)は、ビール市場全体の1%未満で、その規模はまだ小さい。ビール市場全体が伸び悩む中、クラフトビールの成長を市場活性化の切り札に掲げる。
タップ・マルシェは、4種類のクラフトビールをセットできる小型サーバ。セットするビールは、1本3リットル入りのペットボトルに入っているため、多品種を少量で仕入れることができる。
17年4月に首都圏の飲食店に提案を開始。「スプリングバレーブルワリー」「グランドキリン」「ヤッホーブルーイング」「ブルックリン・ブルワリー」のブランドをそろえた。居酒屋やバーなど、もともとビールをたくさん提供している店舗だけでなく、映画館やブックカフェ、すし店など、クラフトビールをほとんど置いていなかった場所でも導入が進んだ。
首都圏での好調を追い風に、3月14日から全国に展開。年内に全国5000店舗導入を目標に掲げているが、すでに店舗数は2500店舗を超えた。取り扱い店舗は、全ての都道府県に広がっているという。
好調の理由について、同社企画部の山田精二部長は「クラフトビールの楽しみ方が、ゆっくりと時間を過ごす場所に合っている」と話す。ビールの飲み方といえば、「ジョッキでグイっと」が定番だったが、多種多様なクラフトビールであれば、おしゃれなタンブラーやスイーツに合うものもある。多少ぬるくなってもおいしく飲める。ワインやコーヒーなどに替わる需要があるという。
17年6月にラインアップに加わった「常陸野ネストビール」を製造する木内酒造の谷幸治製造長は「こだわったビールが飲める店で多く提供してきたが、(タップ・マルシェによって)これまでカバーしていなかったところにも広がっている。クラフトビールが身近なものとして浸透してきた」と話す。
新たな取り扱いブランドとして、5月28日から「伊勢角屋麦酒」、6月18日からは「Far Yeast Brewing」のブランドをラインアップに加える。計7ブルワリーの17種類を楽しめるようになる。
伊勢角屋麦酒を展開する二軒茶屋餅角屋本店の鈴木成宗社長は、「米国のクラフトビール市場はビール全体の12%だが、日本では1%にも満たない。タップ・マルシェは1本3リットルという絶妙な大きさで、導入してもらいやすい。飲みたくても手に入らなかった人に届けることができる」と期待。同ブランドでは「ペールエール」「ヒメホワイト」の2商品を提供する。
「東京ホワイト」「東京IPA」の2商品をタップマルシェで提供するFar Yeast Brewingの山田司朗社長も「クラフトビールの奥行きを知らない消費者がまだたくさんいる。これまでは試してもらう機会があまりなかった。たくさんの人にアクセスする良い機会をいただいた」と語った。
「美術館や図書館など、『館』という言葉が入る名称の施設にも導入してもらいたい」と、キリンビールの山田部長は意気込む。場所や料理、シーンなど、ビールを楽しむシチュエーションは広がりつつある。自由な楽しみ方が定着すれば、市場で存在感を強めていくかもしれない。
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