「昭和の喫茶店」が廃れる一方で「ルノアール」が好調な理由長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)

» 2018年04月24日 06時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

チェーン展開にも積極的

 89年には日本証券業協会に株式を店頭登録(現・JASDAQに上場)。喫茶業界初の上場企業となっている。翌90年には早くも自社発行のプリペイドカードを導入。それ以前のことだが、83年に本格的なPOSシステムを導入して業務効率化を図ったのも、業界初であった。

 ルノアールは伝統的な純喫茶スタイルを取りながらも、いち早くチェーン展開。今もWi-Fiや無料で使える電源を業界に先駆けてサービスに組み込んでいるように、飲食業界の古臭い因習にとらわれずに変化し続ける社風がある。

 17年4月からは期間限定で創業当時の香味を再現した「復刻版ルノアールブレンド」を提供して好評を博したが、85年頃はまだコーヒーも砂糖もミルクも高価な時代。濃いめのコーヒーに、たっぷりのコーヒークリームと砂糖を入れて飲むのが、ぜいたくな嗜好品としての楽しみ方だった。

 今のルノアールのコーヒーは、酸味を抑えて苦味を強調している。さらには糖分を控える健康志向の高まりからブラックでも飲みやすい方向にシフトしている。昔から変わらないように見えても、時代の変化に対応している証拠である。

伸び悩む新業態

 近年の課題としては、新業態開発に熱心に取り組んでもいるが、いずれも伸び悩んでいることが挙げられる。

 99年には低価格・セルフサービスの「ニューヨーカーズ・カフェ」をリリース。エスプレッソをメインとする、スターバックスに対抗したモダンな業態で、現在は7店ある。

 12年には、カナダのバンクーバーを拠点とするシアトル系コーヒーチェーン「ブレンズコーヒー」を日本でフランチャイズ展開していた、ビーアンドエムという会社を買収しているが、現在は東京・青山と埼玉・川越に2店あるのみだ。

 また、03年には女性向けフルサービスのパンケーキやパスタを充実させたエスプレッソも飲める「カフェ・ミヤマ」1号店を新宿南口に出店。現在は7店ある。ルノアールをややカジュアルに寄せて、エスプレッソマシンを導入した「カフェルノアール」という業態も7店ある。

 12年に、埼玉県朝霞市にログハウス風の店舗で、広い駐車場を持つ郊外型喫茶「ミヤマ珈琲」を新提案。コメダを標的に全国展開を目指すもいまだ6店にとどまっている。さらには、ハンドドリップ、カフェプレスによりシングルオリジン(単独農園)のスペシャルティコーヒーを提供する、ブルーボトルコーヒーに対抗したサードウェーブ系「瑠之亜珈琲」を、15年にオープンしていて、飲食ビル「銀座インズ」に1店ある。

photo ミヤマ珈琲の朝霞本町店

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